(ブルームバーグ):クラフトビールを巡る2025年は、暗い話を裏付ける統計が多い。全体の販売量が減少し、価格は概して上昇したほか、全米のブルワリーでは閉鎖が新規開業を上回る期間が05年以来の長期に及んでいる。カナダ産の大麦やホップ、アルミニウムなど生産に必要な外国産品への関税や、誰もが感じるインフレ上昇がその一因だ。
そんな中で、明るい話題を提供したい。個人的なデータに基づく、ずっと前向きな話だ。
筆者はこの1年、これまで訪れたことのない欧米のブルワリー計60軒を巡った。ポートランド(オレゴン州)からラスベガス、オースティン、カンザスシティー(ミズーリ州)、オックスフォード(ミシシッピ州)、アトランタ、デトロイト、レキシントン(バージニア州)、ブルックリン(ニューヨーク州)、ジャンクション(バーモント州)、そしてドイツのパーダーボルンを訪れビールを味わった。
その経験から言えるのは、この世界にはまだまだ愛すべきビールがたくさんあるということだ。
旅の間、タップルームや試飲施設、ホテルのラウンジ、空港のバー、自宅などで855種類の新しいビールを試した。その多くは良質で、素晴らしいと言えるものも少なくなかった。ここで紹介する数々のビールはいずれも逸品だ。
そして、ビール愛飲家から注目されるようになった別の数字にも気付いた。アルコール度数(ABV)だ。「Top Shelf」コラムに先月書いたように、愛飲家の間では低アルコール・ノンアルコールか極度の高アルコールといったABVの両極端へのシフトが進んでいる。
そこで、今年のリストは低アルコール部門と高アルコール部門に分けて掲載し、さらにその中間に位置する昔ながらのインディア・ペールエール(IPA)も幾つか加えた。11種類のビールとスタイルを紹介する。乾杯!
低アルコール
Lemon Cream Earl Grey American Wheat | Kismetic Brewing (インディアナポリス) | ABV4.7%
インディアナポリス東部にある2022年開業のブルワリーでは、レトロなカクテルラウンジの雰囲気と大胆な味の組み合わせが楽しめる。この爽やかな一杯は、ネルソンズティーの紅茶「レモンクリーム・アールグレイ」を軽やかな小麦ビールに浸し、シトラス感とクリーミーさを併せ持つほのかにスパイシーなベルガモットの余韻を実現した。ティータイムにも、リフレッシュしたいときにも最適だ。
Hanabi Lager #15 | Hanabi Lager Co. (カリフォルニア州ナパ) | ABV4.9%
ワインの世界的産地として知られるナパが、最高峰のラガービールを生み出すとは考えられないかもしれないが、もしそれが想像できたら、標準的ラガーより洗練されたビールを期待するだろう。その通りだ。この繊細なイタリアン・ピルスナーは、ベネチア近郊の町名にちなんだ香り高いエラクレア大麦を使用。明るい澄んだ色合いで、グラスに注げばライムやジャスミンの香りが漂う。友人らがワインテイスティングをする横で、落ち着いて味わえること請け合いだ。
Black Is Beautiful Fonio Blonde Ale | Vine Street Brewing (ミズーリ州カンザスシティー) | ABV5%
最近、ビールに関して「フォニオ」という言葉を見かける機会が増えたかもしれない。西アフリカ原産の古代穀物で、軽めのビールにシルキーな口当たりとほのかなかんきつ類のニュアンスを与える。乾燥地帯で灌漑(かんがい)抜きに栽培でき、製粉も不要なため、グルテンフリーでサステナブルでもある。Vine Streetはこのフォニオを見事に活用。外観も香りも白ワインそっくりで、レモンライムの果皮の風味が最初に広がり、最後はキリッと締まる。お口にも地球にも軽やかなビールだ。
Pale Ale (Mosaic) on Cask | Sierra Nevada (カリフォルニア州チコ) | ABV5.6%
米国内で有数のビアバーであるアトランタのブリック・ストア・パブに立ち寄った際、カスク(木製の樽)に詰められたこの定番ペールエールを見つけた。アメリカン・ペールエールはホップの苦みが前面に出やすいが、通常のケグ(ステンレス製の樽)よりも炭酸が弱いカスクで提供されれば、苦みだけでなくフローラルでフルーティーな風味をより感じやすくなる。それがSierra Nevadaのしっかりとしたモルトのコクと調和し、この飲みやすいビールをさらに飲みやすくしている。
Ovesne Tmave Pivo | Amorphic Beer (ミルウォーキー) | ABV6%
より豊かな味わいとコクが欲しいがABVは控えめにしたい-。そんなときに頼りになるのがダークラガーだ。ダークモルトの風味を持ちながら、すっきりした後味。Amorphicの醸造家らは、チェコのダークラガー(チェコ語で「tmave pivo」)に押し麦(同「ovesne」)を加え、「スパンディング」と呼ばれる手法で繊細かつ自然な炭酸を生み出した。これにより、オートミールスタウトのロースト香やチョコレート風味を備えつつ、重さも度数も抑えたビールを実現。見た目や味わいは濃厚でも、酔って視界がぼやけることはなさそうだ。
IPA
Bella Ciao! Red IPA | Heliotrope Brewery (バージニア州レキシントン) | ABV7.9%

このビールについては、レッドIPAやブラックIPAの復活、つまりアメリカンビールに再び苦みが戻ってきている兆候だと書いたことがある。シムコー、センテニアル、カスケードなど米IPAとクラフトビールを築いてきたホップがもたらす松とスパイスの香りに、今や主流となったシトラホップのトロピカルフルーツ風味が加わり、ベースには正統派アンバーエールのカラメルモルト。クラフトビールの過去・現在・未来を映し出す赤い色合いの一杯だ。
Scattered, Smothered, and Covered Double Imperial IPA | Little Cottage Brewing (ジョージア州アヴォンデールエステーツ) | ABV8.3%
醸造所の近くで創業したワッフルハウスの定番メニュー「玉ねぎとチーズ入りハッシュブラウン」の注文用語にちなんだ名前のビールは、この店ともども、私にとって背徳感のある楽しみだ。ホップの効いたビールを好む人やラガー愛好家はヘイジーIPAを見下しているかもしれないが、それがビールのサブジャンルで人気トップである理由は明白だ。フレッシュなフルーツの香り漂うこの一杯はその典型で、口に含むとジューシーな甘いグレープフルーツの味がはじけ、すぐに小気味よい苦みが来て、最後はドライに引き締まる。良質なヘイジーらしく、意外なほど飲みやすいが、アルコール度数は8.3%。
高アルコール
Carneia Barleywine/Belgian Quad Blend | Ordinem Ecentrici Coctores (コネティカット州オックスフォード) | ABV12%
高アルコールビールの魅力の一部は、スピリッツのような洗練さをしばしば帯びる点だ。古代ギリシャの祭りにちなんで名付けられた「Carneia」は、他の多くのビールより高い気品をまとっている。まず、甘いバーレーワインとカラメルを思わせるダークなベルギースタイルのクアドルペルをブレンドし、ウイスキーやバーボンの樽で1年間熟成させる。その結果生まれるのは、豊かな果実に強めの酸味が絡むうっとりするような味わいで、ブランデーやポートワインをゆっくり味わうような節度ある飲み方が求められる。
Inno All’Autunno Belgian Quadrupel | Brasseria Della Fonte (イタリア・ピエンツァ) | ABV13.2%
イタリア有数のクラフトブルワリーが手がけるベルギースタイルのクアドルペルを、アムステルダムの米国をテーマとするボトルショップで見つけた。秋への賛歌という意味を持つ「Inno All’Autunno」はインド原産のマスコバド糖を使用しており、色・ボディー・風味に糖蜜の濃厚さを備えている。さらに20カ月にわたるバーボン樽熟成で、重厚さが際立つ。
Bourbon Barrel 4th Dementia Olde Ale | Kuhnhenn Brewing Co. (ミシガン州ウォーレン) | ABV13.5%
正直に言うと、このビールを初めて飲んだのは、世界最高峰の一角とされるサイド・プロジェクト・ブリューイングの「Beer : Barrel : Time」を味わった直後だった。その上で「4th Dementia」が残した強烈な印象を伝えたい。オールドエールはイギリスのスタイルで、濃い色合いとモルトの味わいが特徴。樽で1年余り熟成され、トフィー、カラメル、焼きマシュマロなどの多彩な風味とオークの個性が際立つ。ほっと温まるような味わいだが、度数は13.5%と極めて高い。
Barrel-Aged Vermillion Barleywine (2024) | Perennial Artisan Ales (セントルイス) | ABV14.1%
セントルイス在住の私は、幸運なことにPerennialの伝説的たる熟成スタウトビールをいつでも楽しめる。ロースト感が強烈な「Sump Coffee Stout」、ブラウンシュガーの甘みを感じる「Maman」、シナモンが効いた「Abraxas」などだ。しかし、私が毎年最も心待ちにしているのはスタウトではなく、バーレーワインだ。果実味が強く、一般的にホップの効いたスタイルで、熟成するとスタウトのような濃厚さが出る。昨年の「Barrel-Aged Vermillion」は31カ月のバーボン樽熟成を経て、バニラとオークの香りに重厚さを加え、干しイチジク・デーツ・プラムの甘い味わいに深みを与えた。来年のボトルがすでに待ちきれない。
ビールに合う最高の料理は
もちろんハンバーガーだ。パテをスマッシュして焼くスマッシュバーガーでも、肉汁たっぷりでも、とろけるチーズたっぷりのバーガーでもいい。ニューヨークのバーガーシーンは盛り上がりを見せている。
原題:After Tasting 855 Beers in 2025, These Are the Best: Top Shelf(抜粋)
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