(ブルームバーグ):米食品医薬品局(FDA)が、経口妊娠中絶薬「ミフェプリストン」の安全性データに関する検証を先送りした。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。マカリー長官が中間選挙後まで延期するよう求めたという。
マカリー氏とケネディ厚生長官はここ数カ月、積極的にミフェプリストンの検証を進めていると議員らに説明してきたが、水面下ではマカリー長官が局内にレビューの先送りを指示していたと、関係者が述べた。
厚生省のアンドリュー・ニクソン報道官は、「FDAが政治目的で今回の検証を引き延ばしているとの主張は事実無根だ」と回答。「FDAの包括的な科学レビューについては、科学的に正確な結論を導くために必要な時間をかけて行われる」と話した。
注目されている中絶薬の検証を来年の中間選挙後へと先送りすることで、選挙での中絶問題の影響が最小限に抑えられる可能性がある。一部の共和党議員が議席の維持で難しい戦いに直面している事情もある。
中絶規制
右派の支持基盤に人気のある中絶規制は、必ずしも全有権者に響くわけではない。ピュー・リサーチ・センターの2024年の調査では、穏健派やリベラル寄りの共和党支持者の多数は全て、あるいは大半のケースで中絶が合法であるべきだと回答している。
それでも、共和党議員の一部は中絶薬の安全性調査を当局に求め続けている。多くの主要医療団体はミフェプリストンの安全性を長年認めているにもかかわらず、バイデン前政権で緩和された対面診察なしでの処方ルールの巻き戻しを狙っている。
中絶薬へのアクセス拡大は長い議論を経て実現した。性や子どもを産むことに関する権利を訴えるリプロダクティブ・ライツ団体は、ミフェプリストンが自宅で使用しても十分安全だというエビデンスを示してきた。女性4万5000人のデータを分析した13年の研究では、薬を服用した患者のうち入院したのは0.3%にとどまり、研究者は経口中絶が「非常に有効で安全だ」と結論付けている。
FDAが処方情報で引用する研究でも、重篤な副作用の発生率は0.5%未満。米自由人権協会(ACLU)によると、米国では中絶の3分の2近くでミフェプリストンが使われており、流産管理にも利用されている。FDAが2000年にミフェプリストンを承認して以降、約750万人が服用したとACLUは推計している。
原題:FDA Slow Walking a Long-Awaited Abortion Pill Safety Study(抜粋)
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