中国では、かつて断崖絶壁を登り、“命懸け”で通学する子どもたちがいました。しかし、「雲の上のスクールバス」と呼ばれる乗り物で登校風景が一変しました。その乗り物、一体何だったのでしょうか。
険しく切り立った崖を一列によじ登る子どもたち。大人でも大変な急斜面を命綱なしで登っていきます。この危険なルートは小学生たちの通学路でした。
中国西南部・雲南省の山岳地帯にある尼珠河村。この村に暮らす小学3年生の陳芸丹さん(8)が通う小学校は、切り立った崖の上にあります。
陳芸丹さんの母 浦雲さん
「(昔は)岩場を登るしかなく、この子は背負われて通っていたんです」
谷底にある村と小学校の標高差は、およそ550メートル。深い谷の中の道なき道を登らなくてはならない通学は、まさに“命懸け”でした。
記者
「子どもたちはかつて、ほぼ垂直な岩肌に開けられた穴を使って、斜面を登って行ったということです。とても小学生の通学路とは思えません」
村から学校までは、片道3時間以上。時には、毒ヘビも出没したといいます。
陳芸丹さんの母 浦雲さん
「(子どもが)転んでけがをするのではないかと、いつも心配でした」
記者
「かつては子どもたちが苦労して通った渓谷ですが、その後、リゾート開発が行われ、現在は一大観光地となっています」
村に転機が訪れたのは、3年前。地元政府が絶景を売りにしたリゾート開発を誘致し、その影響で谷底の村に暮らす小学生たちの登校も大きく様変わりました。
この日、芸丹さんが母親の車で向かったのは、新しく造られた巨大なエレベーターです。乗り込むと、268メートルの中腹までわずか2分で到達しました。
次に乗り込んだのは、小型のロープウエー。住民たちは無料で乗ることができ、子どもたちが通学で利用する様子は「雲の上のスクールバス」と呼ばれています。
3時間以上かかっていた通学が今はわずか30分に短縮され、転落事故でけがをする危険も無くなりました。
小学校教諭 崔瑛さん
「(子どもたちは)以前は、学校に着く頃には疲れて、やる気がなかったけれど、今はとても楽しそうに学校に来ています」
この学校には宿舎があるため、村の小学生6人は現在、10日間を小学校で過ごし、その後の4日間は村に戻る生活をしています。
そして、村の発展とともに子どもたちの教育環境も大きく改善したといいます。
陳芸丹さんの母 浦雲さん
「私は読み書きが少ししかできないから、肉体労働しかできなかった。今の時代、働くには学歴が求められるでしょう。私自身がそういう経験をしたので、子どもたちに同じ思いはさせたくないんです」
芸丹さんの将来の夢は、医師になることです。
小学3年生 陳芸丹さん
「昔、病気になったことがあって。お医者さんなら、たくさんの病気の人を救えるから」
かつては危険な崖を登り、“命懸け”で登校していた子どもたち。通学路の劇的な改善は、未来を担う子どもたちの可能性を広げています。
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