(ブルームバーグ):政府は28日、2025年度補正予算案を閣議決定した。高市早苗首相の下での初の予算編成は補正としてはコロナ禍以降最大の規模となり、積極財政の色が鮮明となった。政府は12月17日までの臨時国会で早期成立を目指す。
一般会計総額は18兆3034億円。歳出は経済対策の関連経費17兆7028億円が大半を占める。歳入では、今年度税収の上振れ分2兆8790億円を充てる。これに伴い、25年度の税収は80兆6980億円と過去最高を更新した。ただ、財源不足を補う新規国債は11兆6960億円に上り、国債頼みの構図も際立った。

「責任ある積極財政」を掲げる高市首相は、拙速な財政再建よりも経済拡大を通じた国力の強化を優先する立場だ。経済政策の司令塔を担う経済財政諮問会議でも、民間議員から積極財政を後押しする意見が出る。財政悪化に警鐘を鳴らす声が政権中枢に届きにくくなる中、どう市場の懸念を払しょくするかが課題となる。
金融市場は中長期的な財政の健全性に不安を抱いている。債券価格のさらなる下落(金利は上昇)を予想する声が増え、円は主要通貨の中でも下落が目立つ。
28日は10年国債利回りが一時1.825%まで上昇。円は対ドルで156円台前半と月初に比べ円安水準で推移している。
片山さつき財務相は会見で、補正後の国債発行額は40兆3431億円と、昨年度の補正後(42.1兆円)を下回っており、「財政の持続可能性にも十分配慮した形となっている」と説明。政府債務残高の対国内総生産(GDP)比を引き下げていくことで「財政の持続可能性を実現し、マーケットの信認を維持していきたい」と語った。

高市首相は26日の党首討論で、経済対策について国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事から「財政上のリスクも手当てされていて安心している」とのコメントがあったとし、「放漫財政との指摘は当たらない」と述べた。
今回の補正予算編成に伴う国債増発は、22年度第2次補正予算の22兆8520億円以来の規模となる。これまで政府が財政健全化の指標としてきた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を悪化させる要因となる。
高市首相はPBではなく、債務残高対GDP比の引き下げを重視する。分子の債務残高が膨らむ以上に分母のGDPが拡大すれば、財政の持続可能性は担保されるためだ。
政府の従来の財政健全化目標は、PB黒字化と債務対GDP比引き下げの両方が併記されていた。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が指摘するように、「債務対GDP比の増減の多くはPB要因によるもの」で、PB黒字化は債務対GDP引き下げのための手段として位置付けられている。
単年度ごとにPB黒字化目標の達成状況を確認する方法を取り下げると明言する高市首相が、債務対GDP比引き下げに向けて道筋を付けられるかが問われる。
(片山財務相の会見内容と市場動向を追加して更新しました)
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