11月17日、2025年7ー9月期の実質GDP速報値が発表されました。前期比マイナス0.4%、年率換算でマイナス1.8%と6四半期ぶりのマイナス成長です。市場予想のマイナス2.4%よりは小幅なマイナスだったものの、日本経済の減速感が鮮明となりました。
ここから見えてくる日本経済の未来像は?大和証券チーフエコノミストの末廣徹氏が徹底分析しました。
6四半期ぶりのマイナス成長の背景

今回の大幅なマイナス成長の要因として、目立ったのは住宅投資の落ち込みです。末廣氏も「住宅投資は前期比マイナス9.4%と、ほとんど10%も減少している。これはかなり珍しい」と指摘します。
その主な原因は建築基準法の改正。「3月に大きく増えて、その反動で4、5月に減っている。法改正で、チェック項目がかなり厳しくなったため、法律が変わる前に着工しておこうという駆け込み需要が生じた結果」と末廣氏は説明します。
しかし、住宅投資の落ち込みだけでなく、GDPの6割近くを占める個人消費は0.1%増とわずかなプラスで伸びは鈍化。GDPギャップもマイナス0.3%程度になると見込まれるなど、総じて「弱い」結果となりました。
この内容について「財政を使う必要があるという議論に繋がりそうな内容」との見方を示した末廣氏。現在、高市政権は経済対策として14兆円を超える財政出動を検討していますが、さらに額を増やそうという声の高まりを予想します。
日本経済の潜在力に黄信号

今回のGDPから、先々の日本経済を見るカギはあるのでしょうか?日本経済研究センターによるエコノミストの予想では、10-12月期はプラス成長に戻ると見込まれているものの、その勢いは弱いとみられています。

ここで末廣氏が重視するのは日本経済の長期トレンド。「赤い線が実際のGDPの推移で、黒い点線はコロナ前のトレンド。コロナ後の回復としてはやはりちょっと物足りない」と分析します。本来なら、コロナ前のトレンドラインまで回復したいところですが、そこまで到達できていないのが実情です。
この弱い回復力について、末廣氏は「2008年のリーマンショック後と同様に、経済構造が変化してしまって、失われた部分が取り戻せていない」と指摘。特に日本固有の状況として「円安インフレによって内需が弱くなっているため、なかなか戻れない状況だ」と分析します。