日本銀行の植田和男総裁は18日、金融政策運営について、今後のデータ、情報次第で適切に判断していくとの見解を示した。高市早苗首相と官邸で初会談後に記者団に語った。

植田総裁は、2013年から政府・日銀ともに努力して物価と賃金がともに上昇するようなメカニズムが復活してきているとし、インフレ率が2%で持続的・安定的にうまく着地するように徐々に金融緩和の度合いを調整していると伝えたと説明した。

為替についても議論したが、具体的な内容については差し控えると述べた。ファンダメンタルズに沿って、安定的に推移することが望ましいとした上で、「政府と連携して為替動向およびその経済への影響について注視していきたい」と述べた。

日銀は10月の金融政策決定会合で6会合連続の政策維持を決めたが、9月会合に続いて2人の審議委員が利上げを提案した。足元の円安進行もあり、市場の早期利上げ観測は根強い。高市首相が積極的な財政政策と金融緩和による経済成長を重視しているとみられる中で、金融政策を巡る両者のやり取りが注目されていた。

植田総裁も出席した12日の経済財政諮問会議で、高市氏は「強い経済成長と安定的な物価上昇の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることが非常に重要」だと言明。今後も政府・日銀が一体となって国民経済の発展に取り組むと強調した。

内閣府が17日発表した7-9月の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率1.8%減と、6四半期ぶりのマイナス成長だった。高市政権は物価高対応を最優先に掲げ、大型の経済対策の策定を進めている。

日銀は次回の決定会合を12月18、19日に開催する。ブルームバーグの10月会合前のエコノミスト調査では、半数が12月会合での0.25%の利上げを見込んでおり、来年1月も含めるとほぼ全員が利上げを予想している。

市場では政府の経済対策による財政悪化への懸念が広がっている。18日の外国為替市場の円相場は、対ドルで一時155円38銭と2月以来の安値を更新した。債券相場は下落(金利は上昇)し、新発10年国債利回りは一時1.75%と2008年6月以来の高水準を付けた。

首相と日銀総裁はこれまでも定期的に会談し、経済・金融動向などについて意見交換してきた。前回のトップ会談は石破茂前首相と植田総裁の間で9月3日に行われた。

(植田総裁の発言の詳細を追加し、更新しました)

--取材協力:山中英典.

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