(ブルームバーグ):中国が自国民に対し日本への渡航を控えるよう勧告し、留学予定の学生にもリスクの高まりを警告したことを受け、旅行・観光関連株が下落している。資生堂株は一時11%安の2361円と、4月7日以来の日中下落率となった。
資生堂の前期(2024年12月期)時点の中国事業売上高比率は25%で、免税事業は11%を占める。日本への旅行を取りやめる動きや中国での不買運動などが現れれば、業績不振の同社の回復ペースが鈍る可能性もある。
新型コロナウイルス禍以降、欧米などからの訪日客も増えているものの、中国や香港発の観光者の占める割合は3割弱と依然として大きい。日中関係の冷え込みが政治だけでなく経済まで広がれば、企業業績にも大きな影響を与える可能性がある。23年には福島第一原子力発電所の処理水放出を巡り、資生堂商品などで不買運動が起きた。

ブルームバーグ・インテリジェンスのキャサリン・リム氏は、中国政府の通達は、資生堂や「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの観光需要主導の売り上げ成長見通しを脅かす可能性があると指摘した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは17日付のリポートで、中国人訪日客が短期的にゼロになった場合、日本の旅行収支受け取りは月間で2000億円近く減少する可能性があり、長期化すれば円安圧力につながるとの見方を示した。長期化した場合、需給面で年間1.5%程度の円安圧力が生じる可能性があるという。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、体験型サービスでは収入の多様化が進む一方、物販は中国観光客依存が続いている面があり、「物を売る系のインバウンド関連にはそれなりに影響が出るとの認識になっている」と指摘した。一方でコロナ禍以降、製造業での対中投資は減っていることから、同業界の下げは限定的だと述べた。
とはいえ現時点で大きな影響は顕在化していない。日本航空(JAL)とANAホールディングスの広報担当者はそれぞれ、日本-中国路線の予約状況に影響はなく、払い戻し方針に変更はないと述べた。も予約状況に変化はないとしている。
良品計画やアシックス、パン・パシフィック・インターナショナルHD、ファーストリテイリングなど中国で事業を展開する小売り株が売られた。またANAHDやオリエンタルランドなども安い。
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--取材協力:長谷部結衣、日向貴彦、横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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