(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)のビットコインは、史上最高値を付けてからわずか1カ月余りで年初来の30%超の上昇分を全て帳消しにした。トランプ米政権の暗号資産に好意的な姿勢への熱狂が後退しているほか、ハイテク株の急騰が一服したことでリスク資産全体への投資意欲が後退したためだ。
ビットコインはアジア時間17日朝の取引で、一時9万3714ドルを下回り、トランプ氏の大統領選挙での勝利を受けて金融市場が上昇していた昨年末の終値を割り込んだ。ビットコインは10月6日に過去最高の12万6251ドルを記録したが、4日後にトランプ氏が関税を巡る予想外の発言を行い、世界的な市場の混乱を招いたことをきっかけに下落に転じた。
シンガポール時間17日午前8時39分(日本時間午前9時39分)時点では下げ幅を縮小し、9万4869ドルで推移している。
サンフランシスコに拠点を置くビットワイズ・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マシュー・ホーガン氏は「市場全体がリスク回避モードだ。暗号資産はその兆候を示す炭鉱のカナリアのような存在だった。最初に反応したのがこの市場だ」と述べた。

この1カ月間で、上場投資信託(ETF)運用者など主要な買い手が静かに市場から退いている。年初にかけてビットコインを過去最高値に主導した潤沢な資金流入は細り、相場の支えを失っている。
これまでビットコインの正当性と価格を支えてきたのは機関投資家だった。ブルームバーグのデータによると、ETF全体で250億ドル(約3兆8650億円)超の資金が流入し、運用資産は約1690億ドルまで膨らんでいた。この安定的な資金流入によって、ビットコインはインフレや通貨価値の下落、政治的不安に対するヘッジとしての位置づけを強めていたが、その脆弱(ぜいじゃく)なストーリーは再び揺らぎ、市場は静かながらも不安定な「市場離れ」という局面にさらされている。
ナンセンのシニアリサーチアナリスト、ジェイク・ケニス氏は「今回の売りは、長期保有者の利益確定、機関投資家の資金流出、マクロ環境の不透明さ、レバレッジをかけたロングポジションの清算が重なった結果だ」と指摘。「長期のもみ合いを経て、市場は一時的に下向きの方向を選んだことが明らかだ」と話した。

暗号資産市場における買い手不在を象徴するのが、マイケル・セイラー氏率いる米ストラテジーだ。ソフトウエア企業からビットコイン保有会社へと転換し、企業による暗号資産投資の旗手とされた同社だが、株価は現在、保有するビットコインの評価額とほぼ同水準まで下落。投資家が同社のレバレッジ戦略に対して、以前のようなプレミアムを支払わなくなっていることを示している。
ビットコインは2017年に1万3000%超の急騰で注目を集めた後、翌年には約75%の暴落を経験するなど、ブームと崩壊のサイクルを繰り返してきた。
今回の下落を押し目買いの好機とみるホーガン氏だが、個人投資家の心理については「かなり弱気だ」と言及。「彼らは再び50%もの暴落に巻き込まれるのを恐れ、先回りして市場から逃げ出している」と語った。

原題:Bitcoin Erases Year’s Gain as Crypto Bear Market Deepens (2)(抜粋)
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