米ニューヨーク州のホークル知事は、予算不足の解消とニューヨーク市のマムダニ次期市長の政策支援の一環として、法人税の引き上げを検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

ホークル知事は4日の市長選前にマムダニ氏への支持を表明しており、同氏の重点政策の一つである無償保育制度の財源確保に向けた新たな課税を模索しているという。非公開の協議に関する情報のため、同関係者は匿名を条件に語った。

ホークル知事の報道官はコメントの要請に応じなかった。

来年1月に就任予定のマムダニ氏は、無償保育制度の拡充やバスの無料運行などさまざまな公共サービスの提供には約100億ドル(約1兆5500億円)の財源が必要になると見積もっている。同氏は、企業や富裕層への増税を財源とする政策を掲げて選挙戦を戦ったが、税制の多くは州議会と州知事の権限に属している。

法人税を引き上げれば、ホークル知事にとっては方針転換となる。2026年に再選を控えるホークル氏はこれまで増税に否定的で、ビジネスや富裕層を州から流出させかねないと警告してきた。

今回の動きには、得票率約50%で当選したマムダニ氏の政策を支援すべきだという圧力に加え、トランプ大統領による新たな連邦予算法に基づく資金削減の影響を州として穴埋めする必要があることも背景にある。

マムダニ氏とホークル知事は13日、マンハッタンの知事執務室で会談し、保育政策や2027会計年度以降の財政方針など幅広い課題について協議した。

マムダニ氏は、州の法人税の最高税率を現行の7.25%から11.5%に引き上げ、ニュージャージー州と同水準にそろえることを望む姿勢を示している。実現すれば、ニューヨーク市内の企業にとっては、市税も含めた実効税率が全米最高水準の約19%に達する可能性がある。

ホークル知事は9月のブルームバーグのインタビューで「他州との競争力には非常に敏感だ」と述べていた。

ニューヨーク州のワシントン予算局長は今週、ウォール街からの歳入や個人所得税収が予想を上回ったことで、州の「財政状況は良好だ」と述べ、来年度には53億ドルの歳入増が見込まれるとした。ワシントン氏は、増税は「最後の手段」であり、「念頭にある最後の選択肢だ」と強調した。

ホークル知事に近い関係者によると、トランプ大統領による予算削減の影響はまだ全容が見えておらず、州として来年取り組むべき課題は複数控えているという。ニューヨーク州は2027会計年度に42億ドルの財政赤字が生じると見込んでいる。

ホークル知事が法人税引き上げの可能性を検討していることは、ポリティコが最初に報じた。

知事はマムダニ氏の掲げる保育の無償化には賛同しているが、ニューヨーク市内だけでも年間に70億ドルの費用がかかると警告している。

9月の記者会見でホークル氏は「州全体で実施するにはこの倍の予算が必要になる」と述べ、段階的な導入を提案している。

原題:Hochul Weighs Corporate Tax Hike to Fund Budget, Mamdani Plans(抜粋)

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