米製薬大手メルクは、インフルエンザ治療薬を開発中のバイオ企業シダラ・セラピューティクスを買収することで合意した。これは主力のがん免疫療法薬「キイトルーダ」の特許切れに備える動き。

買収額は1株当たり現金221.50ドルで、13日終値の2倍超に相当。総額は約92億ドル(約1兆4200億円)に上る。

14日のニューヨーク市場でシダラ株は取引開始直後に106%上昇。一方、メルク株は0.8%下落した。13日終値時点でシダラ株は年初来で294%上昇、メルク株は6.6%下落していた。

メルクは今後5年間で180億ドル規模の売上げ減少が見込まれる特許切れに備え、治療薬の拡充に向けた買収を進めている。2028年には、製薬業界で過去最高の売り上げを誇るキイトルーダの特許が失効する予定で、同薬は昨年の同社売上げのほぼ半分を占めていた。

同社は7月にも、呼吸器疾患治療薬を手がける英バイオ医薬品企業ベローナ・ファーマを約100億ドル(約1兆4700億円)で買収することで合意している。

みずほ証券のジャレッド・ホルツ氏は14日付のリポートで、メルクは「特許の崖に対処するため、単独で大きな問題を解決できる資産を狙うのではなく、複数の中型案件を積み上げる『真珠の首飾り戦略』を引き続き採用している」と指摘した。

シダラが開発中の「CD388」はワクチンではなく、免疫反応を引き起こすタイプの薬ではない。これは合併症のリスクが高い人を対象に、インフルエンザを予防するための長期持続型治療薬で、現在は後期段階の臨床試験が進められている。シダラによれば、ワクチンや抗ウイルス薬に加わる新たな選択肢として、インフルエンザ予防に貢献する可能性があるという。

原題:Merck to Buy Cidara in $9.2 Billion Deal as Sales Drop Looms (3)(抜粋)

--取材協力:Fareed Sahloul.

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