全国の先行指標となる10月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前月から伸びが拡大した。市場予想を上回る伸びで、市場でくすぶる日本銀行の早期利上げ観測をサポートしそうだ。

総務省の31日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.8%上昇した。市場予想(2.6%上昇)を上回った。都が6月から始めた水道料の基本料金無償化が終了したことで、全体が押し上げられた。一方、エネルギーは2.2%上昇、生鮮食品を除く食料は6.7%上昇と、いずれも伸びが鈍化した。

日銀が目標とする2%を上回るのは12カ月連続。日銀は30日の金融政策決定会合で、6会合連続の政策維持を決めた。植田和男総裁は会見で、米関税政策の影響や来年の賃上げの動向を「もう少しみたい」と述べる一方、次回の12月会合で「適切な政策判断をする」と語った。今回の結果を受け、12月の日銀の政策判断が注目される。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は、今回は水道料が特殊要因で上昇したが、「全体として物価の基調の勢いは鈍っている」と分析。その上で、日銀は米関税の物価へ影響というよりも、「経済の基調が腰折れするリスクを考えていると思う」と述べた。総裁中心に執行部は利上げに慎重で、1月までは待つとみている。

東京CPIの発表後、外国為替市場では円がやや買われ、ドルに対し153円台後半まで上昇した。発表前は154円10銭台で推移していた。債券相場は債券先物が下落している。

ブルームバーグが10月会合前にエコノミスト50人を対象に実施した調査によると、50%が次の利上げ時期を12月会合と予想。来年1月までは98%とほぼ全員が想定した。翌日物金利スワップ(OIS)から算出した12月会合での0.25ポイントの利上げ確率は足元で46%程度、来年1月まででは約84%となっている。

賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.6%上昇となり、伸びは前月の1.5%上昇から拡大。賃金から物価への波及が継続するかが引き続き注目される中、連合は23日、2026年春闘で3年連続「5%以上」の賃上げを目指す方針を示した。

生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは2.8%上昇と伸びが拡大した。市場予想は2.6%上昇だった。総合指数も2.8%上昇と伸びが加速。市場予想は2.4%上昇だった。

総務省の説明

  • 宿泊料(8.5%上昇)の前年比伸び率拡大はインバウンドを含めた旅行需要の拡大などが背景
  • 家庭用耐久財は、ルームエアコンが昨年よりもセールの割引率が縮小したことなどでプラス寄与となった
  • 押し下げ寄与となったエネルギーは都市ガス代とガソリンの伸び率が縮小。ガソリンは原油価格下落など反映
  • マイナス寄与となった生鮮食品を除く食料は、チョコレートが押し下げ要因
  • サービスは宿泊料の上昇中心に通信・教養娯楽関連サービスがプラス寄与。一方、外食はハンバーグ、すしなどで昨年値上げが行われた反動でマイナスに寄与

(エコノミストコメントと背景を追加して更新しました)

--取材協力:野原良明.

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