「日本は1980年代のアメリカと同じ状況だ。今こそ労働者、国民に株式所有権を移す時だ」。米投資ファンドKKRのパートナー、ピート・スタブロス氏はこう訴える。さもなければ40年後には富の差が広がった「米国と同じ境遇に陥る」と警鐘を鳴らす。

スタブロス氏は20日、従業員に株式報酬を付与する取り組みを広めるため、自らが立ち上げた非営利団体「オーナーシップ・ワークス」の日本拠点設立イベントに登壇。従業員の資産形成は「賃金だけでは追いつけない。価値が上昇する資産を所有する必要がある」と述べた。

オーナーシップ・ワークスは職場で資産形成できる社会の実現を目指し、2022年に米国で設立された。ファンドが投資先の株式を売却するまでに増加した企業価値などを社員で共有するという仕組みを広げている。資産形成以外に、会社への勤労意欲を高めるなど企業にとってもメリットがあるとしている。

日本は米国外で初の拠点となる。スタブロス氏は30年までに海外にあと4拠点増やしたいという。

同氏は日本の従業員の特長として会社への忠誠心が高く、勤続年数が長い点などを挙げながらも、「生産性成長率は非常に低い」と指摘。株式報酬制度などを採用すれば、こうした強みを生かし、「労働者と企業双方にとって利益となる結果に転換できる」と述べた。

オーナーシップ・ワークスは、KKR以外の投資会社の協力も得て、世界で167社を支援してきた。日本ではかんぽ生命保険や農林中央金庫、みずほフィナンシャルグループなどが賛同している。国内では27年までに10社以上での導入を目指す。

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