(ブルームバーグ):「無印良品」を展開する良品計画は、ネットストアの全サービス・機能を停止したと20日発表した。取引関係のあるアスクルが身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」に感染し、システム障害を起こした影響が波及した。
良品計画の発表によると、ネットストアのほか、公式アプリの一部機能が停止した。アスクル子会社のアスクルロジストに商品の配送を委託していることが原因で、良品計画自体がランサムウエアに感染した事実はないとした。店舗の物流にも影響はなく、通常営業する。ネットストアの再開時期は未定で、影響範囲について引き続き調査を進める。

また、24日から11月3日まで予定していた期間限定セール「無印良品週間」について、実店舗での開催に限ると明らかにした。会員に対して10%値引く主要な販促策を前に、冷や水を浴びせられた格好だ。良品計画の広報担当者によると、直近の電子商取引(EC)比率を開示していないが、2022年8月期は10%、24年8月期には15%を目指すと、23年に発表していた。
ロフト(東京都渋谷区)も物流障害の影響で、ネットストアで販売停止措置をとっていると発表した。再開時期は未定。広報担当者によると、良品計画と同じくアスクルロジストに出荷を委託しているためという。
百貨店を展開するそごう・西武(東京都豊島区)も物流障害を理由に、ネットストアで一部商品の受注と出荷を停止していると発表した。アスクルに出荷依頼しているファッションやコスメなどの商品が影響を受けている。
一方、オフィス用品などを扱うコクヨによると、同社の完全子会社で通販事業を手掛けるカウネットでは、アクセス集中や新規登録の問い合わせ増加が見られるという。受注が急増しているわけではないが、サーバーの増強などで対応する方針だ。
週明けの東京市場では、ランサムウエア感染による物流障害の影響の広がりが懸念され、アスクル株が一時前週末比6%安の1387円と、7月7日以来の日中下落率を付けた。良品計画株も続落し、一時6.6%安の2924円を付けた。
岩井コスモ証券シニアアナリストの饗場大介氏は、良品計画の「ECは比率としてはまだ大きくないが、ECを強化をし始めてその効果が少しずつ出始めたところだった」と指摘。アスクルについては影響が長引けば顧客が他社に流れるリスクもあるとした。
約15社の荷主から受託
アスクルは19日、ランサムウエア感染に伴うシステム障害が発生し、受注と出荷を停止していると発表した。同社は個人情報や顧客データなどの外部流出について、現在調査中だと説明。復旧のめどは立っていない。
アスクルロジストの採用ウエブサイトによると、三芳EC物流センターでは24年時点で約15社の荷主から業務委託を受けているといい、今後無印良品のようなケースが発生する可能性もありそうだ。アスクルの広報担当者は、非公開情報のため取引先についてのコメントは控えた。
直近では、アサヒグループホールディングスでもランサムウエア攻撃を受けシステム障害が発生し、生産や出荷が止まるなど影響が広がっている。同社は、2025年12月期第3四半期決算の開示延期を決め、個人情報が流出した可能性があることも明らかにしている。
警察庁サイバー警察局が9月に発表した調査によると、2025年1-6月のランサムウエアの被害報告件数は116件と、22年7-12月と並び過去最多だった。近年は被害の調査・復旧費用が高額になっている傾向があるという。

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