(ブルームバーグ):英ソナ・アセット・マネジメントや米アポロ・グローバル・マネジメント、英アクスブルック・キャピタルなどのファンドがドイツの自動車部品メーカー、アドラー・ペルツァー・ホールディングの債券を空売りしていることが、複数の関係者の話で明らかになった。アドラーが債務借り換えに苦戦すると見込んでの行動だという。
米部品サプライヤーのファースト・ブランズ・グループが突然破たんしたことをきっかけに、アドラーの債券は売りを浴びた。自動車部品セクターへの不安は数週間前から広がっており、借り換えに向けた同社の取り組みは一層複雑になった。
ファンド3社がいつ空売りを仕掛けたのかは明確でないが、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによれば、アドラー債の空売り比率は2024年11月以降に10%を超えている。4億ユーロ(約703億円)の27年償還債のうち、今年10月10日の時点では約18%が貸株に出されていた。
アドラーの関係者に電話やメールでコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。ソナとアポロ、アクスブルックの各担当者はコメントを控えた。
アドラーは2023年の債券リファイナンス時に株主から現金の注入を受け、収益性が改善していたが、投資家の間では自動車メーカーとそのサプライチェーンに対する懸念が深まっている。欧州の自動車メーカーは中国勢との競争で苦戦し、同市場での売り上げが低迷。米市場でも関税の影響で見通しが悪化している。

今年はドイツの自動車部品メーカー、スタンダード・プロフィル・オートモーティブがすでに債権者の管理下に置かれたほか、突然の米ファースト・ブランズ破たんで業界に対する市場心理は2カ月ほど前から悪化している。ブルームバーグが9月19日に報じたところによると、ファースト・ブランズが8月にローン借り換えに失敗した後、アポロとダイアメーター・キャピタル・パートナーズはファースト・ブランズ債の空売りを手じまった。
クレジットサイツのアナリストは10月6日付の顧客リポートで、こうした出来事は「このセクターにスポットライトを当て、それはアドラーにとって不都合なタイミングだった」と述べ、同社の投資判断を「買い」から「売り」に引き下げた。
ブルームバーグがまとめたデータによると、9月初めの時点で額面1ユーロに対して99セントだったアドラー債は、先週末には90セントまで下げた。
クレジットサイツはアドラーのEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)が2026年にかけて成長すると予想する一方で、運転資金の必要性により流動性は悪化していると分析した。
これとは別にジェフリーズのアナリストらは10月7日付の顧客リポートで、アドラーのEBITDAについて分析。完全子会社ではなく、債券の保証対象となっていない連結子会社が占める部分が増えていると指摘した。
しかしながらアドラー債はこの1週間に一部値を戻した。英銀バークレイズが債務計画に関与し、プライベートクレジットを使った債券リファイナンスの可能性を検討していることが明らかになった。
原題:Sona, Apollo Short the Bonds of Auto-Supplier Adler Pelzer(抜粋)
(アドラー債について情報を加えます)
--取材協力:Neil Callanan、Bruce Douglas.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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