(ブルームバーグ):日本の投資家はインパクト投資を拡大する中で海外市場に機会を求めている。ブルーオーチャード・ファイナンスの最高経営責任者(CEO)が指摘した。インパクト投資とは、リターンの確保を目指しつつ、社会的・環境的効果を生み出すことを目的とした投資手法で、同社は主に新興国市場でこの戦略を展開している。
シュローダー・グループの傘下にあるブルーオーチャードが運用する日本の投資家の資産残高は、過去3年間で4倍余りに拡大し1500億円に達した。同社のグローバルインパクト投資の約5分の1を占める。
マイケル・ウェラCEOは都内でのインタビューで、「日本は当社にとって非常に重要な市場になっている」と語り、「日本の投資家からインパクト投資への本格的な需要が見られる」と指摘した。
インパクト投資は日本でも広く受け入れられつつあるようだ。世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3月、ESG(環境・社会・ガバナンス)や社会・環境的効果などを考慮したサステナビリティ投資を推進する方針を明らかにした。
日本の金融庁は昨年、「インパクト投資に関する基本的指針」で、こうした投資が事業などの持続可能性の向上につながり得ると指摘している。
欧州での広がり
インパクト投資はすでに欧州の機関投資家の間で浸透している。欧州最大級の年金基金であるオランダのABPは昨年、2030年までに少なくとも300億ユーロ(約5兆2800億円)をインパクト投資に振り向ける計画を明らかにした。オランダの年金基金PFZWの運用を担うPGGMも、戦略を全面的に見直し、インパクト重視へとかじを切ったと、IPEインターナショナル・パブリッシャーズは昨年12月に報じている。
日本におけるブルーオーチャードの海外インパクト投資への関心は、主に企業年金などの機関投資家から寄せられており、三井住友信託銀行を通じたものが多い。
ウェラ氏「これはまさに需要が高まっている分野だ」と指摘。「投資家が好むのは、インパクトを生み出しながら雇用創出にとって非常に重要な零細・中小企業を支援できる点だ。同時に、安定した財務リターンも得られる」と述べた。
GSGインパクト・ジャパン・ナショナル・パートナーが3月に発表した調査によると、2024年度の日本のインパクト投資残高は約17兆3000億円に達し、前年比で約50%増加した。国際的な推進団体グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワークによれば、世界全体では約1兆6000億ドル(約240兆円)に上る。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループでマネジングディレクター兼サステナビリティー・トランジション戦略グローバル責任者を務めるアニケット・シャー氏によれば、インパクト投資の枠組みは、投資家が現実世界への効果を定量化できるため、基本的なESGスクリーニングよりも持続的である可能性がある。
米国では、共和党がESG戦略を米国資本主義に対する脅威として攻撃している。しかし、リターンに照準を定めるインパクト投資は、政治的な論争を避けつつ、価値に基づく投資アプローチとして代替手段を提供する可能性がある。
「明らかに中長期的な視点を持ち、現在の世界の政治情勢に左右されない投資家が存在する」とウェラ氏は語った。
原題:BlueOrchard Says Japan Clients Seeking Impact Investments Abroad(抜粋)
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