(ブルームバーグ):17日の日本市場では、米地方銀行の融資問題が表面化した影響でリスク資産を回避する動きが広がり株式が大幅に下落、安全資産とされる債券と円は買われた。
日経平均株価は695円(1.4%)安で取引を終えた。米株安と円高で金融や電機中心に売りが先行、3メガバンクや日立製作所、アドバンテストといった銘柄が下げを主導した。安全資産需要から債券は上昇(金利は低下)した。円も買われて対ドルで149円台後半に上昇した。

金融市場は株高・円安・債券安という「高市トレード」とは真逆の動きになった。日本の政局については自民党の高市早苗総裁が首相に選出される可能性が高く、市場では組閣後の具体的な政策への読みが水準を左右する1つの要因になる。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は17日付リポートで、米信用不安が高まっているとして「今夜や週明けは米地銀決算が多いので注意だ」と述べた。政局については自民と維新の政策合意が注目として、維新は政策的な成果のために本気だろうと指摘した。
株式
東京株式相場は反落。米国で地方銀行2行の融資問題が明らかになって金融中心に株式が下げたことが懸念された。
野村証券の小高貴久シニア・ストラテジストは米国の信用不安問題を受け、「リスクオフの流れが日本市場にも波及した」と指摘。「数年前に米地銀が破綻したときも結局影響は限定的だった。今回の地銀を巡る問題も現時点ではまだ一過性のものだと市場は認識しているようで、来週まで尾を引く感じではない」と述べた。
その上で「来週は米国で半導体大手や自動車などの決算が焦点の一つになり、人工知能(AI)関連の材料が出てくれば日本株も反応する可能性がある」との見方を示した。
セゾン投信の瀬下哲雄マルチマネジャー運用部長は、米国での信用面を巡る不安について、今回はそこまで大規模ではなくパニックに陥るような状態では今のところないとした上で「ちょっと警戒感はある」と述べた。
銀行や保険、証券など金融株に売りが増加した。原油先物安が嫌気され、鉱業や石油・石炭製品も安い。HOYAや三菱重工業など半導体関連や防衛関連の一部がプラス圏に浮上して指数は下げ渋る場面があったが、午後に下げが加速した。食品など内需の一角は堅調だった。
債券
債券相場は上昇。長期金利は一時1カ月ぶり低水準をつけた。米国で銀行不安が再燃し、長期金利がリスク回避の買いで半年ぶりの水準に低下した流れを引き継ぎ、買いが先行した。流動性供給入札を無難にこなしたことで買い安心感も広がった。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、「米国の利下げ幅が50bpになることを織り込み始めており、米金利低下で国内債券に買いが波及している」と指摘。日本銀行の内田真一副総裁はのあいさつについては、「昨年の同じあいさつでは日銀金融政策について深い話はなかった。昨日の田村直樹審議委員の発言ほどの情報提供はないとみられ、債券買いの方が強い状況だ」と述べていた。
日銀の内田副総裁は17日午後3時35分から全国信用組合大会であいさつをして、経済・物価見通しが実現していくなら引き続き利上げを行うとの考えを示した
財務省は17日、残存期間5年超15.5年以下を対象にした流動性供給入札を実施。入札結果によると応札倍率は3.36倍と同じ年限の前回9月12日入札と比べて上昇した。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、「流動性供給入札はしっかりした結果となり、米金利は節目の4%を割れて債券相場はこうした環境の良さを背景に堅調地合いが続いた」と述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
円相場は対ドルで150円突破して6日以来の高値を更新した。米地方銀行2行が不正の疑いのある融資の問題を明らかにしたことで信用不安が強まり、リスク回避でドルが売られ円が買われた。
三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、米地銀に端を発した信用不安からリスク回避の動きが強まり、株安、円高に振れていると指摘。米国の信用不安は一時的だとみているが、一定の警戒感から当面は円高傾向が続くだろうと言う。
米ワシントンを訪問中の日銀の植田和男総裁は16日(現地時間)、経済・物価見通しが実現する確度が高まれば金融緩和の度合いを調整していくと述べたが、反応は限定的だった。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:長谷川敏郎、堤健太郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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