楽天グループが17日に起債した永久劣後債は、発行利率が今年の日本企業による円建て社債で最高となり、国内外の投資家から需要を集めた。

楽天Gの三木谷浩史社長

楽天Gが起債したのは償還期限の定めがなく、発行から5年後に償還(コール)が可能になる劣後債。市場ではコールまでの期間が実質的な年限と見なされる。発行利率は4.691%、発行額は820億円に決まった。

ブルームバーグのデータによると、利率はこれまで今年最高だったソフトバンクグループの劣後債(8月起債の実質年限5年債)の4.556%を上回った。

高い利率が奏功し、主幹事の大和証券によると投資家から最終的に5000億円以上の需要が集まった。海外からは1200億円を超えたという。

ブルームバーグ・インテリジェンスのシャロン・チェン氏は、国債に対する上乗せ金利(スプレッド)が350ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、投資家に当初提示したレンジ(350-370bp)の下限で決まった点を挙げ、楽天Gの資金調達環境の改善を示すものだと指摘。今回の起債により、同社は2026年末までの社債償還に必要な資金を確保したとの見方を示した。

楽天Gは今回債で調達した資金を、26年4月に初回コールを迎える米ドル建て永久劣後債の償還に充てる予定だ。広報担当者はブルームバーグの取材に対し、同社初の永久劣後債だったが、幅広い業態かつ国内外の投資家からの参加があり、事業運営や財務状況について一定の評価を得られたと考えているとコメントした。

 

利率が高くなった背景には、国内で次期政権が財政拡張的な政策を採る可能性が高いとの観測から、金利が上昇傾向にあることも影響している。国債利回りとスプレッドの合算で決まる社債の利率には上昇圧力がかかりやすい。ブルームバーグ指数によると、円建て社債の平均利回りは今月、09年以来の高水準となった。

野村証券の荻野和馬シニア・クレジット・アナリストは、企業の平均支払利息はタイムラグを伴って徐々に増えるとし、「上昇幅を抑えるため」に年限の短い社債の発行が増えていると指摘。借り換えが頻繁になると債券の「希少性」が薄れ、発行条件に影響しかねないと述べた。もっとも、金利上昇局面では企業収益も増えるため、負担はある程度相殺されるとの見方も示した。

(投資家需要の詳細などを加筆し、記事を再構成しました)

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