米投資銀行ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは、米自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループの突然の破綻での同社の関与について臆測が高まる中、沈黙を破った。

ファースト・ブランズのバンカーとして10年以上にわたり関係を築いてきたジェフリーズの名は、同社が自動車部品のコングロマリットへと成長する過程で頻繁に登場していた。だがここ数週間は、サプライチェーンファイナンスへの依存を巡る懸念の中で破綻したファースト・ブランズとの関係を理由に、厳しい目を向けられている。

ジェフリーズは8日、これまでで最も明確な形で説明を行い、ファースト・ブランズ関連でどのような損失リスクを抱えているか、あるいは抱えていないのかを明らかにした。

ジェフリーズや他の金融機関にとっての焦点は、ポイント・ボニータ・キャピタルというファンドだ。同ファンドは、約7億1500万ドル(約1100億円)のファースト・ブランズの売掛債権を裏付けとする金融商品に投資していた。ウォルマートやオートゾーンなどの顧客からの支払いの取りまとめはファースト・ブランズが担っていた。ファースト・ブランズ関連はポイント・ボニータの30億ドル規模のトレードファイナンス・ポートフォリオの約4分の1に相当した。

ジェフリーズによると、傘下のルーカディア・アセット・マネジメントはポイント・ボニータに1億1300万ドルを出資している。モルガン・スタンレーのアナリストは8日、ジェフリーズの潜在的損失は最大でも約4500万ドルにとの試算を示したが、その後も破綻を巡る新たな情報が明らかになっている。同日中にファースト・ブランズの債権者が、同社のトレードファイナンス資産のうち最大23億ドル分が「消失した」と主張した。

最終的な損失額がどうであれ、ジェフリーズにとっては評判面での損害のほうが深刻で高くつく可能性がある。

モーニングスターのアナリスト、ショーン・ダンロップ氏はインタビューで「評判への打撃は大きい。顧客が多額の損失を被る可能性があるからだ」と指摘。その上で、ジェフリーズは市場で最もリスクの高い借り手に対しても積極的に債務をアレンジする銀行として知られていると述べ、「今回の影響は、そうした姿勢の当然の帰結として時折起こるものだ」と話した。

かつては銀行業界で挑戦者的な立場にあったジェフリーズだが、近年着実に存在感を高め、より積極的な案件を主導する投資銀行として競争力を強めてきた。

ジェフリーズの広報担当者はコメントを控えた。

ジェフリーズとファースト・ブランズの関係は2014年ごろに始まった。その後、ファースト・ブランズはレバレッジドローン市場を活用して成長を続け、次第にオフバランス処理される比較的不透明な資金調達手法であるトレードファイナンスを積極的に利用するようになった。

ジェフリーズは7月に、ファースト・ブランズの約60億ドル規模の借り換え案件を投資家に提案した。しかし、債権者が同社のトレードファイナンス活用に懸念を示したことで、8月にはリファイナンスが中断された。

10年以上続いた両社の関係はにわかに不安定さを増し、ジェフリーズは投資家に対し、ファースト・ブランズから十分な情報を得られなかったと説明した。ファースト・ブランズは9月下旬に破産申請を行った。

既に複数の投資家がポイント・ボニータからの資金引き揚げに動いている。ブルームバーグの報道によると、ブラックロックやテキサス州の公的基金は最近、部分的償還を要請した。このニュースを受け、ジェフリーズの株価は急落し、8日取引終了時点で約8%安となった。

影響はさらに広がっている。ブルームバーグによると、キャンター・フィッツジェラルドは5月、UBSグループからヘッジファンド部門オコナーを買収することで合意していた。しかし裁判資料で、オコナーがファースト・ブランズのサプライチェーンファイナンスに関連して1億1610万ドルの債権を保有していることが明らかになったため、キャンターは買収条件の変更を求めているという。

モーニングスターのダンロップ氏は、ファースト・ブランズ問題で損失を被った顧客は今後、ジェフリーズに資金調達を依頼したり、新たな取引に参加したりする可能性が低くなるとの見方を示した。「投資銀行業務の案件パイプラインや資産運用への資金流入に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

原題:First Brands’ Go-To Bank Jefferies Opens Books as Fallout Builds(抜粋)

--取材協力:Eliza Ronalds-Hannon.

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