日産自動車が新型電気自動車(EV)「リーフ」を発売する。約8年ぶりの全面改良で航続距離も大きく伸びるが、市場が広がらない国内で競合他社もラインアップを拡充しており、販売については悲観的な声も上がる。

発表によると、新型リーフの販売価格(消費税込み)は518万8700円からで、現行モデルの類似グレード(525万3600円)と比べると若干の値下げとなる。航続距離は670-702キロメートルと2倍以上になった。17日から受注を始める。日産によると、バッテリーの容量がより少ないモデルを来年2月頃に発表する予定で、より多くの客が買いやすい価格とするという。

初代リーフは世界初の量産EVとして2010年に発売された。ただ、航続距離への不安、充電インフラの不足、ガソリン車に比べ高い価格などの要因で本格的な普及には至らなかった。近年は米テスラや中国の比亜迪(BYD)の台頭で、「EVのパイオニア」と自負する日産の存在感は低下している。

日産が初代リーフを投入してから約15年たったが、日本でEVが普及したとは言いづらい。日本自動車会議所によると、24年の国内EV販売台数は約6万台と乗用車全体の1.6%にとどまった。一方で海外勢に加え、スズキやホンダなど国内メーカーも9月以降にEVの新車を投入しており、小さい市場の食い合いが進みそうだ。

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは新型リーフについて、「少なくとも米国、日本、欧州では爆発的に売れることはない」と考えているという。

国内市場ではこれまでよりも廉価なEVの増加に伴い「EVだから高くていいという許容度は下がってきている」とし、販売台数を伸ばすためには「相当競争力のある価格を考えないと難しい」と話した。

日産が国内市場における競合車種と想定するBYDのATTO3は418万円から、テスラのモデル3は531万円から販売されている。

こうした状況下で、日産の遠藤慶至チーフ・プロダクト・スペシャリストがリーフのターゲット市場として期待を寄せるのが欧州だ。「欧州は約10%弱がEVに切り替わっている一方、日本はまだEVのシェアが2%だ」とその背景を説明する。

 

ブルームバーグNEFによると、24年の欧州における乗用EV販売台数(プラグインハイブリッド車を含む)は世界全体の2割弱を占め、同1%に満たなかった日本を大きく上回る。ただ、欧州ではBYDなどの中国勢が廉価なEVなどで攻勢をかけており、対抗するのは容易ではない。中国勢は8月販売で欧州EV市場の10%弱のシェアを得た。

(比較対象の現行モデル価格を訂正します)

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