金スポット価格がアジア時間8日に1オンス=4000ドルを初めて突破し、最高値を更新した。米政府機関の閉鎖や景気を巡る懸念で、金価格の高騰に弾みがついた。

金スポット価格は一時1.3%高の4037.10ドルに達した。シンガポール時間午後2時2分(日本時間同3時2分)時点では4028.13ドル。

わずか2年前に2000ドルを下回っていた金相場は、今世紀に入り株式を大きく上回るリターンを記録している。

金価格が今年に入り50%超上昇した背景には、世界貿易の不透明感や米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性と米国の財政安定性への懸念がある。また、地政学的緊張が安全資産需要を押し上げている一方、中央銀行はハイペースで金購入を継続している。

 

金価格高騰にさらに弾みをつけているのは、米政府予算を巡る議会審議の行き詰まりを受け、投資家の間で市場ショックに備える動きが強まっていることだ。米金融政策の利下げサイクル入りも、利息を生まない金には追い風。金価格に連動する上場投資信託(ETF)の資金流入は9月に3年余りで最大を記録した。

サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「金が4000ドルを突破したのは恐怖だけが理由ではなく、資産の再配分も背景にある」と指摘。「経済指標の発表が止まり、利下げが視野に入る中で実質利回りは低下し、人工知能(AI)関連株は割高感がある。中央銀行が今回の上昇の基盤を築いたが、今は個人投資家とETFが次の段階を主導している」と分析した。

金価格の急騰は、広範な経済・政治不安を映すことが多い。世界金融危機後には1000ドル、コロナ禍では2000ドル、そしてトランプ政権の関税政策が市場を揺るがした3月には3000ドルの大台を突破した。今回の4000ドル台乗せは、トランプ米大統領がFRBへの圧力を強め、パウエル議長に利下げを迫り、クックFRB理事の解任を目指すなど、中央銀行の独立性が試される中で実現した。

マッコーリー銀行のアナリストは9月30日のリポートで「金はFRBの独立性を巡る市場の懸念が最も高まったときに循環的ピークを迎えるだろう」と予想。「仮にFRBの独立性が損なわれ、明確な政策ミスが生じた場合、金価格の上昇はさらに勢いを増すはずだ」と述べた。

原題:Gold Tops $4,000 for First Time as US Shutdown Fuels Rally(抜粋)

(相場を更新し、アナリストの予想などを追加して更新します)

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