エネルギー輸出市場を巡り、世界の2大経済大国である米国と中国による覇権争いが進行している。米国が世界に自国の化石燃料を買わせようとしているのに対し、中国はクリーンエネルギー技術を世界に売り込もうとしている。

現時点での勝者は明らかに中国だ。

中国による電気自動車(EV)や太陽光パネル、バッテリー、その他の二酸化炭素(CO2)削減技術の輸出は、ここ数年で伸び続けている。クリーンエネルギーのシンクタンク、エンバーの最新報告書によると、8月の輸出額は過去最高の200億ドル(約3兆円)に達した。

エンバーのデータアナリスト、ユーアン・グレアム氏は「技術価格が大きく下落しているにもかかわらず、中国のクリーンエネルギー技術の輸出額は過去最高を記録した」と述べた。

世界有数の化石燃料輸出国である米国は、入手可能なデータに基づくと、7月までに800億ドル相当の石油・ガスを輸出。一方で、中国は同期間に1200億ドル相当のクリーンエネルギー技術を輸出した。この傾向は今も続いている。

米エネルギー情報局(EIA)によれば、米国の石油輸出は2024年に過去最高を記録したが、中国のクリーンエネルギー技術輸出額はそれを300億ドル上回った。

 

輸出額が示すのは全体像の一部に過ぎない。太陽電池パネルの価格は下落しているが、これは中国が収入1ドル当たりで、より多くの太陽電池パネルを輸出していることを意味する。今年8月の太陽電池関連の輸出収入は23年3月に記録した最高額には及ばなかったものの、輸出された4万6000メガワットの電力容量は過去最高だった。

 

重要なのは、中国のクリーンエネルギー技術輸出が新興国市場で急拡大していることだ。今年これまでの中国産EV輸出の半分余りは、経済協力開発機構(OECD)加盟国以外の国々向けだった。

 

米国はトランプ大統領の1期目、そしてバイデン前政権下で石油・ガスの生産拡大を推進。その結果、輸出が急速に増加した。トランプ氏は2期目に規制緩和で生産をさらに拡大することを目指しており、同時にクリーンエネルギー技術分野を弱体化させる措置を打ち出している。

 

注目すべきは、中国が依然として石油・ガスの主要な輸入国でもあるという点だ。エネルギー需要が極めて大きいため、自国で製造したクリーンテクノロジー製品の多くを国内で使用している。今四半期、中国国内で販売されるEVの台数が、米国で販売される全ての車(燃料種別を問わず)の合計を上回る見込みだ。

対照的に米国は、自国の化石燃料需要を自給できる立場にある。

とはいえ、両国はそれぞれが強みを持つ分野で過剰な生産能力を抱えている。これが毎年数十億ドルの輸出収入を生み出している。

米国は化石燃料輸出をさらに拡大し、価格下落が続く低炭素製品分野で中国を上回る収入を得始めるかもしれない。しかし、中国のクリーンエネルギー技術輸出量は増加し続けるため、他国に対する影響力は強まるだろう。

米中のエネルギー製品・技術を輸入する国々からすれば、違いは極めて明白だ。英国最大のエネルギー小売業者オクトパス・エナジーのグレッグ・ジャクソン最高経営責任者(CEO)は、クリーンエネルギーは「ハードウエアであり、一度購入すればその後10年から20年にわたり電力を生み続ける」が、「ガスは購入したその日に使い切り、二度と戻らない」と指摘した。

原題:China Is Beating the US in Battle for Energy Export Dominance(抜粋)

--取材協力:Ruth Liao、Stephen Stapczynski、Grant Smith.

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