トランプ米大統領は、医療保険制度改革法(オバマケア)に基づく補助金を巡って民主党と交渉する意向を示した。政府閉鎖を打開するきっかけとなる可能性がある。

トランプ氏は6日、ホワイトハウスで記者団に対し、具体的な議員名は挙げなかったものの、「民主党と話をしている。医療保険に関して非常に良いことが起こる可能性がある」と指摘。「私は共和党員だが、民主党よりもはるかに医療保険を重視している」と語った。

ホワイトハウスおよび共和党指導部は、医療保険料に対する税額控除を巡る交渉に入る前に、民主党は政府機関の再開に賛成票を投じる必要があると主張してきたが、今回の大統領の発言は共和党側の姿勢転換を示すものとみられる。

民主党のシューマー上院院内総務は声明で「トランプ氏の主張は事実ではない。しかし、ようやく民主党と協力する用意があるなら、われわれは交渉の席に着く」と述べた上で、「トランプ大統領と共和党が米国の家庭のために医療制度で何かを成し遂げる用意があるなら、民主党はそれを実現するために協力する」とした。

民主党は2025年末に失効するオバマケアの補助金延長や、先に成立した大型減税・歳出法に盛り込まれたメディケイド(低所得者向け医療保険制度)削減撤回を求めて、共和党のつなぎ予算への支持を拒んでいる。

トランプ政権は6日、連邦職員の大量解雇に踏み切る前に、民主党につなぎ予算を支持する機会をもう一度与える方針を示した。

上院は6日遅く、11月21日まで政府機関の運営を継続するためのつなぎ予算案について、5回目の採決を実施したが、賛成52、反対42と、可決に必要な60票に届かず、否決された。

採決後、トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、行き詰まりの要因は民主党にあると非難し、譲歩するよう要請。同時に政府機関再開後に協議に応じる用意があると示唆した。

トランプ氏は投稿で「民主党の失敗した医療政策やその他の問題について、喜んで協力するが、まずは政府の再開を認めなければならない。彼らは今夜、政府を再開すべきだ!」と強調した。

厳しい措置

これに先立ち、トランプ氏の上級経済顧問であるハセット国家経済会議(NEC)委員長は、民主党が「理性的」な対応を取るべき時だと主張した。

トランプ氏はこれまで、政府機関の閉鎖を利用して数千人の連邦職員を解雇する意向を示している。通常なら、連邦職員は政府閉鎖時に一時帰休扱いとなる。

ハセット氏は米経済専門局CNBCのインタビューで、大統領と顧問らは上院の採決を注視していると述べた。ハセット氏は法案が否決された場合、トランプ政権が「厳しい措置」を取るだろうとけん制した。

連邦職員の解雇に関して問われると、「民主党が政府機関の運営再開を拒むなら、われわれがこれまで進めてきた政府効率化への取り組みはむしろ加速するかもしれない」とハセット氏は述べた。

下院の共和党指導部はすでに可決済みのつなぎ予算案を上院が通すまでできることはないとして、政府閉鎖が終わるまでワシントンを離れる方針を示している。

上院共和党トップのスーン院内総務は5日、FOXニュースの番組で「必要なのは、あと5人の民主党議員に賛成票を投じてもらうことだけだ」と述べていた。

共和党はアメとムチの戦略で、民主党議員5人の懐柔を図っている。具体的には、オバマケアの補助金延長に関する協議をほのめかす一方、民主党が拒否すれば連邦職員の大量解雇やプロジェクト中止を断行する構えをみせている。

一方、共和党の穏健派は仲介役となり、政府機関再開に向けて民主党穏健派の説得にあたっている。オバマケアの補助金を何らかの形で延長したいと考えている上院共和党のラウンズ議員やコリンズ議員らが主導した先週の協議は2日夜に決裂したが、6日に再開される見通しだ。

原題:Trump Eyes Health Care Talks With Democrats to End Shutdown (3)(抜粋)

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--取材協力:Lauren Dezenski.

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