対話型人工知能(AI)のChatGPTを展開する米OpenAIは、上場企業ではないものの、世界で最も価値の高いスタートアップとして株式市場への影響力を急速に強めている。

先週には同社がChatGPTに商品を直接購入できる機能「インスタント・チェックアウト」を導入すると発表したことで、電子商取引会社のショッピファイとエッツィの株価が急騰した。また、オープンAIが社内で活用している新機能を紹介するブログ投稿が公開されると、アトラシアンなどAIによる業界変革への懸念で揺れていたソフトウエア関連株に再び不安が広がった。

さらに6日には、半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とAIインフラ構築に関する契約を締結したと発表。AMDはこの契約により数百億ドル規模の新たな収益を得られる見通しで、発表を受けてAMDの株価は一時38%急騰。日中ベースで2016年4月以来の大幅高を演じた。このニュースは業界全体に衝撃を与え、エヌビディアやブロードコムの株価はいずれも下落した。

市場を大きく動かすこうした影響力は通常、アップルやエヌビディアといった巨大企業に限られるものだ。しかし、株式上場の予定をほとんど示していないにもかかわらず、オープンAIは直近で企業価値が5000億ドル(約75兆円)と評価され、幅広い銘柄に影響を及ぼす存在になりつつある。6日に開かれる開発者会議など、同社の発表やイベントが投資家やトレーダーにとって極めて重要な注目材料となっている。

UBSのアナリスト、カール・カールステッド氏は「ソフトウエアやインターネット関連の投資家は、オープンAIが今後どの方向へ進むのか、どれだけの破壊的影響を及ぼし得るのかに強い関心を寄せている」と指摘。その上で、オープンAIは事業拡大を続ける中、「ChatGPTのサブスクリプション以外の分野に、もっと積極的に事業を多角化する必要があるとの見方が市場のコンセンサスになっている」と述べた。

投資家はこうした戦略が示されるか手掛かりを得ようと、サンフランシスコで現地時間6日午前10時(日本時間7日午前2時)に開幕するオープンAIの年次イベント「DevDay(開発者会議)」に注目している。このイベントは、提携先企業やインフラ関連銘柄の株価を押し上げる一方で、オープンAIが新たに進出を狙う分野の企業には下押し圧力となるなど、再び株式市場に波乱をもたらす可能性がある。

サム・アルトマン氏率いる同社は、今回のイベントで「より高度な旅行予約エージェント」など新たな消費者向けAIエージェントを発表する見通しだと、前出のカールステッド氏は10月1日付の調査リポートに記述。AIブラウザーを発表する可能性もあるとの見方を示していた。

原題:OpenAI Is Fast Becoming a Whale in Stock Market It Has Shunned(抜粋)

--取材協力:Matt Turner、Subrat Patnaik、David Watkins.

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