(ブルームバーグ):35年と5カ月。東証株価指数(TOPIX)が最高値を更新し、ついに史上最長の弱気相場が終わるまでにかかった時間だ。
TOPIXはバブル崩壊後、最高値から約8割下落。大底で投資していたら、極めて大きなリターンを得ていたはずだ。
だが2023年に筆者のようなバリュー重視派の言うことに耳を傾けていただけでも、今や65%高だ。米S&P500種株価指数の74%高にはやや及ばないが、かなり健闘している。
この先も上値余地はあるのだろうか。恐らくある。日本は先進国で2番目に大きな株式市場を持ち、コーポレートガバナンス(企業統治)改革が続いている。
指数構成銘柄は優れたグローバル企業が多く、他の市場、特に米国に比べれば依然として割安だ。それでも、「楽に稼ぐ」好機を既に逃したと感じるかもしれないし、実際にそうなのかもしれない。
しかし、朗報がある。対馬海峡を隔てた隣国でもう一度のそうしたチャンスがありそうなことだ。
つい最近まで韓国市場は2013年当時の日本に少し似ていた。株価評価は低く、いわゆる「コリアディスカウント」は恒久的と受け止められていた。多くの投資家もほとんど関心を寄せなかった。
株価純資産倍率(PBR)は07年に記録したピークの1.74倍からわずか0.84倍まで低下。金融危機のさなかの水準をも下回った。
米国のPBRは5.5倍だ。AVIグローバル・トラストのジョー・バウエルンフロイント氏によれば、年初時点で韓国上場企業の約70%が純資産価値(NAV)を下回って取引されていたのに対し、米国ではわずか6%だった。
それでも沈滞した市場心理を変えるものは何もないように見えた。割安というだけでは、変化をもたらすきっかけがなければ、安いままにとどまる。
1990年代や2010年代に日本に投資していたわれわれが語れるのは、きっかけを待つのはつらいということだ。
だが、忍耐はたいてい報われる。日本の株式市場を長期低迷から押し上げたきっかけを思い出してほしい。当時の安倍晋三首相だ。
安倍氏は経済と市場の改革に総力を挙げた。とりわけ日本企業のコーポレートガバナンス強化を推し進め、2013年に米国を訪れた際には、ニューヨーク証券取引所の鐘を鳴らし、自身の経済政策「アベノミクス」をアピールした。
市場はこれに応じ、同氏は改革を継続した。20年に首相を退いた安倍氏は22年に銃で撃たれて殺害された。しかし、日本は、以前に比べて株主に一段とフレンドリーになった。
アーカス・リサーチの共同設立者で日本通のピーター・タスカ氏が言うように、敵対的買収やプライベートエクイティー(PE、未公開株)取引、小規模・非効率企業の退場に対し一段とオープンになっている。非課税の投資枠の大幅な見直しもあった。投資家が好む施策の数々だ。
海を隔てた韓国でも、政治家たちは日本の進展に目を向けてきた。株価が上がるのは誰にとっても好ましい。
韓国株も保有
韓国は24年、日本に似せたような「企業バリューアップ」プログラムを打ち出した。そして今年は李在明大統領が、韓国総合株価指数(KOSPI)を5000ポイントに乗せようとする計画を示し、「安倍流」を前面に打ち出した。今のところ順調だ。
半導体輸出をけん引する人工知能(AI)ブームの追い風もあって、KOSPIは10月2日に初めて3500ポイントを超え、年初来の上昇率は既に45%を突破した。
「韓国にとても興奮している」と語るバウエルンフロイント氏は、3日終了週の時点でポートフォリオのほぼ8%を韓国に投じていると明かした。
理由の一つはバリュエーションで、直近の新規投資の一つである化粧品メーカー、アモーレパシフィックはNAVに対し40%のディスカウントだ。さらに改革やアクティビスト(物言う投資家)といったきっかけもある。
AVIは日本に早くから投資している。同社の経験によれば、新たなルールで投資家の動きが活発化すると、まず企業行動が、その次にバリュエーションが変わり始める。
韓国で株主提案を受けた上場企業は、20年はわずか10社だったが、24年には60社に増えた。
韓国は「新たな日本」ではない。過去35年の苦難を経ても、日本市場の規模は、グローバル投資家が単一市場向けの資金配分で安心できる大きさがある。米国から分散する資金の受け皿としても自然な選択肢だ。
一方、韓国は依然として新興国市場に分類されている。正直ばかげていると思うが、多くのポートフォリオで本当の新興国とひとくくりにされており、世界のトップ10入りには程遠い。
だから日本株の保有は維持しつつ、韓国株も少し持っておくといい。AVIはポートフォリオの15%以上を割安な日本企業に振り向けている。きっかけが与えられれば、バリューは常に表面化する。
(このニュースレターを執筆しているメリン・サマセット・ウェッブ氏は、ブルームバーグUKウェルスで独自の取材を行うエディターです)
原題:Why Korea Is Becoming the New Japan: Merryn Talks Money (2)(抜粋)
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