(ブルームバーグ):日本銀行が6日に開いた10月の支店長会議で、政策判断のポイントになる今後の賃上げ動向について引き続き高めの賃上げが必要とする企業の声が多く聞かれた。会議での報告をまとめた「各地域から見た景気の現状」を公表した。
企業からは理由として、人手不足感の強さのほか、最低賃金の引き上げ、最近の食料品を中心とする物価上昇などが指摘された。一方、関税政策の影響や海外経済の減速などで企業収益が大きく下振れた場合には、賃上げを抑制せざるを得ないとの声もあった。
記者会見した正木一博理事・大阪支店長は、人手不足の中で企業経営者は引き続き賃上げが必要と認識していると語った。一方で、賃上げ率に関しては、米関税政策の影響が企業の売り上げや収益にこれから具体的に出てくるとし、「来年の賃上げの程度を申し上げるには、情報が十分ではない」との認識を示した。
植田和男総裁は3日の講演で、賃金と物価が「緩やかに上昇していくメカニズムは、今後も維持される」とし、見通しに沿って経済・物価が推移すれば利上げを続けていく方針を改めて示した。今回の支店長会議での報告は、日銀の政策正常化路線を支える材料となり得る。
米関税
価格設定面では、仕入れコストや人件費、物流費などの上昇を転嫁する動きが続いているとの報告が多かった。ただ、米などの食料品価格の上昇を背景に消費者の節約志向がやや強まる下で、値上げの抑制や低価格商品の品ぞろえ強化などの動きも見られるとの報告があった
輸出・生産については、一部の地域のサプライヤーから、関税の影響によって収益が下押しされている国内納入先で、取引価格の交渉スタンスが厳格化しているとの声が聞かれた。ただ、現時点では人件費の価格転嫁の流れを阻害するまでには至っていないとの報告が多かったとしている。
自動車産業が集積する東海地区の上口洋司名古屋支店長は会見で、北米向けの自動車輸出について、「これまでのところ堅調な需要が見られている」と指摘。先行きの不確実性は高いものの、駆け込み需要の反動もそれほど大きく出ないとの声が聞かれているという。
さくらリポート
会議に合わせて公表した地域経済報告(さくらリポート)では、全9地域のうち北海道が景気の総括判断を引き下げ、残る8地域は据え置いた。一部に弱めの動きも見られるが、全ての地域で景気は「緩やかに回復」「持ち直し」「緩やかに持ち直し」としている。
市場では、日銀の利上げ時期を巡って予想が揺れ動いている。9月の金融政策決定会合で政策委員9人のうち2人が政策維持に反対したことなどを受けて、10月の利上げ予想が一時70%近くまで上昇。しかし、4日の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことで、足元では2割台に急低下している。
(大阪、名古屋支店長の記者会見での発言を追加して更新しました)
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