(ブルームバーグ):3日の日本市場では円が対ドルで147円台後半に下落。日本銀行の植田和男総裁が利上げに積極的ではないとの見方から円売りが優勢だった。債券は上昇。株式も買われ、日経平均株価は終値での最高値を更新した。
植田総裁は午前に大阪経済4団体共催の懇談会で講演し、「まずは緩和的な金融環境を維持し、経済活動をしっかりと支えていくことが大切」だと発言。午後の記者会見では物価高への政策対応が遅れる「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクについて、可能性は現時点で高くないなどと述べた。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、講演はハト派的で、午後も全体的にマイルドな内容だったと指摘。「今週は野口審議委員、内田副総裁とタカ派な発言が続いたので、最後にバランスを取りにいったのではないか」と分析した。
市場の政策金利見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、10月の利上げ確率が5割台半ばに低下した。
為替
円相場は対ドルで147円台後半に下落。植田日銀総裁の発言を受けた円売りが優勢だった。
ただ、SBI FXトレードの上田真理人取締役は円がどんどん売られる感じではないと話す。9月の金融政策決定会合で「審議委員2人から利上げ提案があり、主な意見からは他にもタカ派的な政策委員がいたようだ。今後のデータ次第ではあるが10月利上げの確率はまだ高い」との見方を示した。
債券
債券相場は上昇。パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、植田総裁の会見で「10月利上げについて決定打となる発言がなく、買い安心感が出た」と述べた。
あすの自民党総裁選について松川氏は、幹事長人事が焦点になるとみている。小泉進次郎氏が総裁、高市早苗氏が幹事長となれば、財政拡張懸念から債券にはマイナス要因となると予想。財政規律派の林芳正氏が幹事長に起用されれば、イールドカーブ(利回り曲線)はフラット(平たん)化する可能性があると話した。
新発国債利回り(午後3時時点)
株式
東京株式相場は大幅上昇。米国株の続伸や、植田日銀総裁の発言を受けた為替の円安で投資家心理が強気に傾き、電機や情報・通信、化学株などに買いが広がった。
米OpenAIとの提携を発表した日立製作所が急伸し、米エヌビディアとAIコンピューティング基盤の共同開発を発表した富士通も高い。アジア時間の米株価先物の堅調も追い風となり、内外需とも幅広く上げた。
岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、半導体や株価水準の高い値がさ株が上がっていると指摘。直近売りに押されてた銀行もしっかりし始めているとし、物色の裾野が広がってきたと話した。
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--取材協力:我妻綾.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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