米テスラが2日発表した7-9月(第3四半期)販売台数は過去最高を記録した。だが、米連邦政府の電気自動車(EV)向け税額控除が終了したため、同様の業績を今後再現することが難しいとの見方が広がり、株価は下落した。

7-9月販売台数は前年同期比7.4%増の49万7099台。ブルームバーグがまとめた市場予想平均は約43万9600台だった。

この日の米株市場でテスラ株は買い優勢で始まったものの、勢いが続かず下落に転じ、前日比5.1%安で終了した。9月は時価総額が月間ベースで過去最大の増加を記録しただけに、利益確定の売りに押された。

こうした株価の反応は、投資家心理がテスラの主力であるEV事業から離れつつあることを示している。市場の注目は、ロボタクシーや人工知能(AI)、ロボティクスといった開発途上の事業に移っており、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)もこうした分野が将来の企業価値をけん引すると述べている。

ベンチマーク社のアナリスト、ミッキー・レッグ氏は顧客向けリポートで「われわれの見解に変更はない」と述べ、賢明な投資家は目先の納車台数の変動よりも、テスラのロボタクシーや人型ロボット「オプティマス」といった高利益率の事業に目を向けているとの見方を示した。

2025年前半のEV販売が低調だったものの、テスラ株は9月に33%上昇し、年初からの下落分を取り戻した。時価総額は同月に4019億ドル(約59兆円)増加した。

米国で1台当たり7500ドルのEV購入税控除制度が9月末で終了する前の駆け込み需要がテスラの自動車事業を一時的に押し上げた。

同事業は、モデルの老朽化や競争の激化に加え、米国のEV市場支援策の撤廃が重荷となって過去数四半期にわたり低迷が続いていた。またマスクCEOがトランプ大統領と緊密な関係にあったことで、その政治姿勢に対する消費者の反発にも直面した。

EV税控除廃止を前にゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、現代自動車といった他の自動車メーカーにも広範な駆け込み需要が見られた。リビアン・オートモーティブも、予想を上回る販売台数を報告したが、年間見通しを従来の予想範囲の下限に下方修正した。

コックス・オートモーティブで業界分析を担当するステファニー・バルデス・ストリーティ氏はブルームバーグ・テレビジョンで「この切迫感が消費者の行動に現れた」と述べ、「先行きは厳しくなる」として10-12月(第4四半期)の販売鈍化を予想した。

CFRAリサーチの株式アナリスト、ギャレット・ネルソン氏は「7-9月販売台数は予想を上回ったものの、今回のデータは過去を振り返る性質である点を強調したい」と指摘。「先行きを見ると、排出権取引市場における制度変更が収益に及ぼす影響や、優遇措置のない米国市場でのEV需要には依然として大きな疑問が残る」と述べた。

テスラの販売台数は、10月22日に発表予定の決算の先行指標となる。同社は来月に年次株主総会を開き、最大1兆ドル規模となり得るマスク氏の新たな報酬案を採決する見通しだ。

原題:Tesla Investors Look Past a Record Quarter of Vehicle Deliveries、*TESLA SHARES CLOSE DOWN 5.1% AFTER GAINING AS MUCH AS 2.5% 、Tesla Sales Surge to Record on Rush to Snag US Tax Credit (3)(抜粋)

(株価を更新しアナリストのコメントを追加します)

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