(ブルームバーグ):人工知能(AI)ブームの勝者探しで、意外な銘柄が急浮上してきた。老舗の米鉱業・建設機械大手キャタピラーだ。
黄色い油圧ショベルやブルドーザーで知られる同社は、9月を過去最高値で終えた。AI絡みの旺盛な電力需要により、あまり知られていないキャタピラーの発電用タービンへの需要を押し上げるとの思惑が背景にある。
半導体メーカーやソフトウエア銘柄の株価急騰で始まったAIブームは、その後データセンターや電力関連の銘柄に波及。足元ではAI経済の構築に巨額の資金が流れ込む中で、物色先の範囲がさらに広がっている。
ガムコ・インベスターズのガベリでポートフォリオマネジャーを務めるブライアン・スポンハイマー氏は「事実上の情報経済あるいはデジタル経済において、市場はマグニフィセント・セブン以外の勝者を渇望している」と話す。
キャタピラー株は9月に14%値上がりし、2023年12月以来の大幅な上昇率を記録。年初来の上昇率は32%と、ハイテク株中心のナスダック100指数の17%、マグニフィセント・セブンの19%を大きく上回っている。
キャタピラー株は2日午前終盤の取引でも1.2%高で推移。欧州最大の年金基金であるオランダの公務員年金ABPが保有するキャタピラー株を売却したと伝わったが、市場は意に介していないようだ。
9月の高騰に火を付けたのはオラクルだ。大量の電力と処理能力を必要とするクラウド事業に関してオラクルが予想外に強気の見通しを示したことで、この需要を満たすにはキャタピラーのタービンが欠かせないとの連想が働いた。オラクルの発表以降、キャタピラー株は9営業日のうち8日で大きく値上がりした。
オッペンハイマーのアナリスト、クリステン・オーウェン氏は、データセンターへのエクスポージャーが「認識される一方で、利下げが住宅建設や商業建設の活性化につながるとの期待もある」と述べた。
AI需要が押し上げているのはタービンだけではない。オーウェン氏によれば、キャタピラーはデータセンター建設に不可欠な銅の採掘機械を販売しており、建設現場でのキャタピラーの建機需要も見込まれる。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)は先週、データセンター向けの需要を理由に、キャタピラー株の目標株価を495ドルから517ドルに引き上げた。これは1日終値から約8%の値上がりを見込んだ水準だ。
キャタピラーは「ソーラー・タービンズ」と呼ぶ発電事業の業績について内訳を開示しておらず、投資家が実態を把握するのは難しい。だが、BofAのアナリストは同事業について「キャタピラーで最も利益率が高く、成長見通しも強い」と述べている。
「キャタピラーは建設・鉱山機械メーカーの印象が圧倒的に強いが、発電事業は今後の1株利益(EPS)拡大局面でけん引役となる可能性が高く、投資家に最も理解されていない事業でもある」と、BofAのアナリスト、マイケル・フェニガー氏はリポートで述べた。
現在の株価水準はウォール街の平均目標株価を上回っており、ここから上値を伸ばすのは容易ではないとの見方もある。予想PER(株価収益率)は23倍と、2021年以来の高水準だ。
ただ、AI関連の電力需要で恩恵を受けるとされる他の銘柄に比べれば割安感がある。BofAのフェニガー氏は、そこに上昇余地を見いだしている。
発電機器メーカーの中では、今年に入り株価が40%余り上昇しているバーティブ・ホールディングスのPERが36倍。GEベルノバは株価がおよそ倍に値上がりし、PERは53倍に達している。キャタピラーは、マイクロソフトやエヌビディアといった大手のAI関連銘柄と比べても割安だ。

原題:Caterpillar Emerges as Unlikely AI Winner on Turbine Demand(抜粋)
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