米連邦最高裁判所は1日、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事の即時解任を認めるよう求めていたトランプ大統領の要求を退けた。FRBへの影響力拡大を狙っているトランプ氏にとっては打撃となった。

これにより、少なくとも最高裁が来年1月の口頭弁論後に判断を下すまで、クック氏は職にとどまることが可能になる。クック氏は住宅ローン契約に関する詐欺疑惑を理由にトランプ氏が解任を通告した8月下旬以降も職務を継続している。同氏は疑惑を否定している。

最高裁はまた、クック氏の解任を巡る司法省の上訴が審理される間、トランプ氏による解任の申し立てについては判断を保留すると述べた。下級審はクック氏が訴訟で勝訴する可能性が高いとの見方を示していた。今回の決定に反対意見を示した判事はいなかった。

最高裁は今年、トランプ大統領が複数の連邦機関幹部を解任したことを巡る訴訟で、おおむねトランプ氏の立場を支持してきた。ただ、今回のクックFRB理事に関する判断は特に重大な意味を持つ。FRBが経済の安定を担う上で、ホワイトハウスからの独立性を維持することは歴史的に不可欠とされているためだ。

ホワイトハウスのデサイ報道官は「トランプ大統領は正当な理由に基づき、クック理事を合法に解任した」と述べ、「来年1月の最高裁での口頭弁論を経て最終的に勝訴することを楽しみにしている」と続けた。

クック氏の弁護団側は現時点でコメントの要請に応じていない。FRBはコメントを控えた。

FRBは司法省とは別に独自の法務部門を持つが、今回の訴訟では中立の立場を保っており、「裁判所のいかなる判断も尊重する」考えを示している。FRBは次回10月28-29日に会合を開き、追加利下げの是非を議論する。その後の会合は12月9-10日、来年1月27-28日に予定されている。

サンフランシスコ連銀の元上級顧問、ティム・マヘディ氏は「決着には程遠いが、ひとまずFRBの独立性にとっては勝利だ」と指摘。「先送りにしたようなものだが、1月に再びこの問題に向き合う必要がある」と続けた。

FTCの訴訟  

最高裁は9月、トランプ氏が連邦取引委員会(FTC)のレベッカ・ケリー・スローター委員の解任を認めるよう求めた訴訟について審理すると発表した。この訴訟はクック理事のケースにも影響を及ぼす可能性がある。最高裁が審理で扱う論点の一つに、連邦判事が公職者の解任を阻止する権限を持つかどうかが含まれているためだ。

最高裁は12月上旬にFTC訴訟の口頭弁論を行う予定だ。クック氏の訴訟日程は、最高裁がまずFTCのケースを精査した上で、クック理事の解任問題に取り組もうとしていることを示している。

「正当な理由」

クック氏は解任を不服として8月に提訴し、2つの主要な主張を掲げた。一つはトランプ氏が解任前に正式な通知や弁明の機会を与えなかったことは適正手続きの権利を侵害したという点。もう一つは、解任理由とされた詐欺疑惑が、「正当な理由」がある場合にのみFRB理事を解任できると定めた連邦準備法に違反するという点だ。

首都ワシントン連邦地裁のコブ判事は9月、クック氏の主張はいずれも認められる可能性が高いとし、訴訟が進行する間は解任の一時差し止めを認める判断を下した。

司法省はその後、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)前に判断を示すよう、ワシントンの連邦高裁に申し立てを行った。しかし、高裁は賛成2、反対1でトランプ政権の要請を退け、クック氏の会合参加が認められた。司法省はこれを不服として、FOMC終了後に最高裁に介入を要請。今回の最高裁判断に至った経緯がある。

FRB理事の任期

原題:Supreme Court Refuses to Let Trump Oust Fed’s Cook for Now (1)(抜粋)

(第5段落以降に詳細を追加して更新します)

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