人工知能(AI)を巡る投資熱の高まりで、半導体株は人気の的となってきた。しかし、半導体メーカーのブロードコムなどの株価が急伸した後、投資家の関心はこれまで見過ごされがちだった半導体製造・検査装置メーカーに向かっている。

製造工程で半導体の検査に用いられる装置を提供するテラダインの株価は、4月の安値からほぼ2倍となり、7月下旬以降に50%余り上昇した。また、同業界で最大級の米メーカー2社であるラムリサーチとKLAの年初来上昇率は69%超と、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を構成する30銘柄中、4位と5位をそれぞれ占める。

 

ラムリサーチは9月に過去最長の14営業日続伸となり、その間に株価は36%上昇した。同業のアプライド・マテリアルズも8営業日続伸し、20%上げた。

マイクロソフトやアルファベットなどがAI関連投資を拡大し続ける中、多くの半導体メーカーのバリュエーションは割高感が増している。こうした状況で、半導体装置メーカーはより合理的な水準で成長を狙える投資先となった。しかし、投資家が一斉に資金を向け始めた今、そのバリュエーションは以前ほど魅力的ではない。

カロバール・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「市場は明らかに次のAI設備投資の波を先取りしており、ファウンドリーやクラウド事業者が積極的に支出を続けると見込んでいる。ただ、バリュエーションはすでに大きく上昇しており、発注の一時停止や投資の遅延があればすぐに打撃を受けかねない」と述べた。

メモリーやストレージといった他の見過ごされがちなセクターでも同様のトレンドが見受けられる。

ラムリサーチやKLAを供給先に持つマイクロン・テクノロジーは、今年に入り90%余り上昇。AIコンピューティングに不可欠な高帯域幅メモリー(HBM)の需要急増が追い風となった。韓国のサムスン電子とSKハイニックスはマイクロンの競合企業であると同時に、テラダインの主要顧客でもある。

サスケハナのアナリスト、メフディ・ホセイニ氏は先週、テラダインの目標株価を133ドルから200ドルに引き上げた。メモリー市場での検査装置の力強い需要見通しが背景にある。9月29日の株価終値は134.33ドルで、49%の上昇余地を示唆している。

問題の一つは、半導体装置のような周辺的なAI関連銘柄でさえも割高になりつつあり、減速局面におけるリスクが高まっている点だ。

キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリストは最近、ラムリサーチの投資判断を引き下げ、株価上昇に「見合う形でコンセンサス予想や実際の収益力が直ちに高まるとは考えていない」と指摘した。KLAについても、モルガン・スタンレーとCFRAが投資判断を先週引き下げた。

ラムリサーチとKLAの今後1年の利益見通しに基づく予想株価収益率(PER)は年初時点では20倍前後だったが、現在は30倍に迫っている。ブロードコムの36倍よりは割安だが、SOX構成銘柄の平均を上回る。テラダインは33倍と、エヌビディアよりも割高な水準にある。

ボーン・ネルソンの副最高投資責任者(CIO)兼ポートフォリオマネジャー、アダム・リッチ氏は「この上昇は不安定に見える。AI投資の指数関数的な伸びが続かない限り維持できないだろう。今は誰もが勝ち組だが、永遠に勝ち続ける者はいない」と語った。

原題:AI-Fixated Traders Pile Into Teradyne, Other Obscure Chip Stocks(抜粋)

--取材協力:Subrat Patnaik.

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