日本銀行の野口旭審議委員は29日、金融政策運営について、経済・物価の上方リスクに言及した上で、利上げの必要性が高まりつつあるとの認識を示した。札幌市で行った講演内容を日銀がホームページに公開した。

講演を受けて、東京外国為替市場の円相場は上げ幅を拡大し、対ドルで一時ニューヨーク終値比0.5%高の148円71銭まで上昇した。債券市場では先物相場が上げ幅を縮小。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、10月末の次回の日銀金融政策決定会合で利上げが実施される確率が6割台に上昇した。

野口氏は、国内の各種経済指標を確認すると、「2%の物価安定目標の達成は着実に近づいている」と指摘。それは、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」と語った。

日銀の野口旭審議委員

現状の日本経済・物価においては「下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増している」と説明。その意味で「わが国の金融政策は今、状況の見極めが必要な局面に差し掛かっている」とも述べた。

日銀は19日の決定会合で、政策金利を0.5%程度に据え置く一方、上場投資信託(ETF)の売却を決めた。政策維持には高田創、田村直樹の審議委員2人が反対し、0.75%程度への利上げを提案した。政策委員の中で利上げに慎重なハト派と位置づけられている野口氏の前向きな発言を受け、早期実施の可能性が一段と増している。

下方リスク

野口氏は、日本経済が「ゼロノルムから2%ノルムへの移行の最中にある」中で、「現状の金融緩和度合いを適切なタイミングで調整していくことがより重要になる」と主張。一方で、米関税政策に伴う下方リスクに直面しているとし、「当面は、物価の基調を可能な限り慎重に見極める必要がある」とも語った。

野口氏は、金融緩和や財政出動に積極的なリフレ派として知られている。昨年は3月のマイナス金利解除と7月の0.25%程度への利上げに反対した。今年5月の講演では、政策金利の調整は「ほふく前進的なアプローチが重要」と述べた。

他の発言

  • 米関税政策による下方リスク、どの段階でどの程度まで解消するか明確でない
  • バランスシート縮小、十分な時間をかけて行われるべきだ
  • 金融政策の円滑運営に一定規模のバランスシートが必要
  • サービス価格の硬直性、徐々に縮小しつつある

(詳細を追加して更新しました)

--取材協力:山中英典.

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