(ブルームバーグ):キリンホールディングス傘下のキリンビールは25日、2035年までに海外売上比率を現在の7%から2割まで引き上げる目標を発表した。
主力のビールブランド「一番搾り」は現在、世界40以上の国と地域で展開している。海外での売上比率を引き上げるために、ビールに加えて開けてすぐ飲めるRTDの「氷結」ブランドなどを東南アジアを中心に強化していく。10月には同地域の事業を統括管理する子会社をマレーシアに立ち上げる。
キリンビールの堀口英樹社長は会見で、これまで国内事業に集中した分、「海外での本格的デビューに出遅れた」ことを認めた。半面、このタイミングでの東南アジア強化については、同地域のアルコール消費が拡大傾向にあることをチャンスと判断したためだという。同社が対外的に海外事業戦略を発表するのは初めて。
同社資料によると、26年には同地域の販売基盤を構築し、商品ラインアップも拡大して、売上収益520億円を目指す。35年には東南アジア以外の地域でも基盤を構築するなどして、1000億円程度まで引き上げる。

英市場調査会社のユーロモニターインターナショナルによると、24年のアルコール世界総販売量でキリンHDは15位。
国内のビール消費は少子化や若年層のアルコール離れで減少傾向にあり、このまま国内市場に依存しているだけでは成長に限界がくる。アサヒは欧州の高級ビール市場を強化し、サントリーはRTDで世界トップシェアを狙う。同業他社が海外で先行する中、キリンも追随する構えだ。
フィリップ証券アナリストの川崎さつき氏は発表前の取材で、キリンHDにとって最優先課題はヘルスサイエンス事業の利益成長だと指摘。そのためには「国内外のビール事業から安定的にキャッシュを創出することが重要」と述べ、キリンビールの海外事業でも成長余地を示せれば、業績の安定性がより補完されると話した。
教訓
過去、キリンHDは海外事業で苦い経験をしている。11年にブラジルのビール会社を買収したことがあったが、同国経済の悪化や想定以上のコスト、販売減などにより苦戦を強いられた。17年には買収価格を大幅に下回る金額で売却せざるを得なかった。
キリンHDはその後、アルコール事業への依存から脱却すべくヘルスサイエンスに軸足を移した。アジア・パシフィック地域でサプリメントなどを展開するオーストラリアのブラックモアズを子会社化し、健康分野の強化を図った。同事業は今上期に初めて黒字化したこともあり、過去の失敗を教訓にアルコール事業の海外拡大に再び舵を切る。
堀口社長は、今回の海外事業戦略について、「最初からM&A(企業の合併・買収)などの大きな投資は考えていない」とした上で、成長が見込めるタイミングで考えていけば、「リスクを抑えられると考えている」と説明した。
(会見からの詳細を加えました)
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