(ブルームバーグ):人工知能(AI)への熱狂が株式市場に奇妙な新しい「数式」を生み出している。巨額のAI投資計画が示されると、その支出額を上回る規模で企業の株式時価総額が膨らむという現象だ。
例えばエヌビディアは先週、ライバルのインテルの株式50億ドル(約7400億円)相当を取得すると発表。さらに週明けには、生成AIのChatGPTの開発元OpenAIに最大1000億ドルを投資する計画を明らかにした。こうした発表があった3営業日で、エヌビディアの時価総額は3200億ドル超増加し、投資予定額の3倍に相当した。
中国のアリババグループは、今年初めに500億ドルのAI投資計画を示していたが、それを上回る支出を行うと表明。米国預託証券(ADR)は24日に一時10%上昇した。同社は具体的な追加額は明らかにしなかったが、時価総額は350億ドル超拡大した。
通常、企業の大型投資計画は短期的に株価の支援材料とならないことが多い。しかし今回の動きは、投資家が依然としてAI関連銘柄に積極的であり、データセンターに巨額を投じて同分野の主導権を狙う企業の株式を買うことに満足していることを浮き彫りにした。AI投資のリターンを財務諸表で示すことができている企業はまだごく一部に過ぎないものの、市場はこれらの企業の時価総額を大幅に押し上げている。
グローバルXマネジメントのテーマ別調査ディレクター、テジャス・デサイ氏は「AIで主導権を握るには多額の投資が必要だと市場は確信している。こうした需要を真に満たす規模とインフラさえあれば、この機会から利益を得られると市場は信じている」と語った。

今年に入り、AI投資計画を打ち出した他の大手ハイテク株も上昇している。メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コムの4社は合計3170億ドル超の投資を表明。株価上昇により時価総額は計1兆8000億ドル膨らんだ。これらの企業の株価上昇はS&P500種株価指数の今年の上昇分の大半を占める。
OpenAIやソフトバンクグループ、メタなどと提携し、業績見通しが堅調なオラクルもAI投資計画から恩恵を受けている。同社は2026会計年度に350億ドルの設備投資を行う見通しで、これを29会計年度までに650億ドルへと積み増す計画だ。株価は今年これまでに80%超上昇し、時価総額は約3900億ドル拡大した。
原題:Alibaba, Nvidia Show Market Is Instantly Rewarding AI Spending(抜粋)
--取材協力:Janet Freund.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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