(ブルームバーグ):沖縄県の老舗ビールメーカーであるオリオンビール(豊見城市)が25日、東京証券取引所プライム市場へ新規株式公開(IPO)した。公開価格の2倍を超す初値を形成した後も株価は一段高となり、同社の値動きは今後のIPO銘柄の需要を計る試金石になりそうだ。
オリオンビール株の初値は1863円と、公開価格の850円を119%上回った。一時2262円まで上げ幅を拡大し、終値は1950円だった。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、相場環境が良いことも後押ししたとみる。同業のビール会社と比べて株価評価尺度(バリュエーション)は高いが、自己資本利益率(ROE)は同業の約2倍のため「極端に割高というわけではない」と指摘。特に海外での販売拡大に注目するとし、今後の業績に拡大余地があるため、「バリュエーションは許容できる範囲だろう」話した。
事情に詳しい複数の関係者によると、オリオンビールIPOへの応募倍率は全体で60倍超だった。個人投資家や地方金融機関などリテールの需要は配分された株数の約90倍に達し、海外投資家を含む機関投資家は割り当てられた株数に対して約40倍の申し込みがあったと関係者は述べた。最終的な投資家への配分比率は、リテールが約48%で機関投資家は約52%だったという。
英運用会社M&Gインベストメンツや米運用会社ニューバーガー・バーマン、英運用会社ゼナーアセットマネジメントが事前に同社株購入に関心を示していた。株主の米投資会社カーライル・グループと野村ホールディングス傘下の投資会社は、売り出す株数を積み増し、最終的なIPO規模は約230億円と当初の170億円から膨らんだ。

上場後も買い需要を集めて株価が堅調に推移すれば、上場を控える企業群に追い風となりそうだ。年初からの国内IPO市場で大型案件はJX金属のみで、総額6220億円が調達された。東京地下鉄(東京メトロ)やキオクシアホールディングスがあった昨年1年間の9610億円と比べると今年のIPO市場の動向はやや減速感がある。
今期(2026年3月期)の調整後営業利益は39億8000万円と前期比13%増の予想。企業が効率的に利益を上げているかを計るROEは中長期的に約15%を目指すとも発表した。前期は10.8%だった。オリオンビールはカーライルと野村HDが19年に買収しており、沖縄県の製造業として初の上場企業になる。
IPO案件全体を取り仕切る主幹事は野村証券、みずほ証券、SMBC日興証券が務めた。株式の一部は欧州やアジアを中心とする海外投資家に販売され、全体の38%に相当する約1000万株が海外で売り出された。
(2段落の株価情報を更新)
--取材協力:堤健太郎.記事についての記者への問い合わせ先:東京 田村康剛 ytamura17@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:上野英治郎 e.ueno@bloomberg.net上野英治郎、浅井真樹子、院去信太郎もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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