(ブルームバーグ):子会社の会計処理問題で遅れていたニデックの前期(2025年3月期)の有価証券報告書が26日に提出期限を迎える。社内では別の不適切会計の疑いも浮上し、第三者委員会が設置された。市場からは不適切会計の範囲や上場を維持できる内容なのかといった点について懸念の声が上がっている。
ニデックは6月、イタリアの子会社で生産したモーターの原産国の申告に誤りがあり、関税の未払いが発生した可能性を認識したとして調査に着手したことを公表した。「完了に至るまでには相当な長期間を要する」と想定されるとして有報の提出期限を9月26日に延長した。事業年度終了後3カ月以内とされる基準を大幅に過ぎる事態となっている。
今月3日には、中国のグループ企業で24年9月下旬にサプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(約2億円)を適切に処理しなかった可能性が浮上。ニデック本体やグループ会社の経営陣の関与・認識のもとで不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数見つかったとし、外部の弁護士などで構成される第三者委員会を設置した。

ブルームバーグインテリジェンスの若杉政寛アナリストは調査をどのくらいまでさかのぼればいいかは不明だとした上で、「過去とのしがらみのない岸田光哉社長だからこそ第三者委の設置に踏み込んだ印象」だと話し、どのような結果が出たとしても社内風土を変える好機になるとの見方を示した。
ニデック株は第三者委設置を受けてストップ安となり、いまだ発表前の水準には回復していない。24日終値ベースで年初来では7.5%下落しており、東証株価指数(TOPIX)の14%高を大きく下回るパフォーマンスとなっている。
ニデック創業者の永守重信グローバルグループ代表は猛烈な仕事ぶりで知られる。利益目標の達成に厳しく、業績や株価向上にこだわる経営姿勢で会社を急成長させた。企業を巡る社会の目が厳しさを増す中、永守氏は6月の定時株主総会で、コンプライアンス(法令順守)の徹底が最重要だと強調。世界中の従業員に、「絶対に法律上の違反をしたらダメなんだということを今徹底的に教えている」と時代の変化に対応する姿勢を示した。
監査法人の判断
ニデックは発表資料では、資産の評価損を計上する時期を自社に都合のいいように調整しているとも解釈できる内容が含まれていた、といった趣旨の説明のみだった。詳細は明らかにしておらず、市場では調査結果への関心が高まっている。ニデックはイタリア子会社の問題の影響を除いた4-6月期(第1四半期)の業績速報値を公表しており、営業利益は前年同期比2.3%増の615億円、売上高と純利益は減収減益だった。
岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、今の状況では監査法人が有報を承認しない可能性があり、提出は難しいのではないかとの見方を示した。仮に有報が提出できない状態が続くと上場維持にも影響が出てくる可能性も指摘した。
東京証券取引所のルールでは、有報の虚偽記載などを行った企業が内部管理体制などについて改善の必要性が高いと東証が認めたときには「特別注意銘柄」に指定することができると規定。指定から1年後の審査で対応が適切になされていないなど場合は上場廃止とするとしている。
ニデックの広報担当者は取材に対し、現時点で発表している以上のことについては回答できないと述べた。
過去には歴代経営陣がインフラや半導体事業で工事損失の先送りや利益の水増しを行った東芝や、有価証券投資の巨額損失を隠蔽(いんぺい)していたオリンパスが上場廃止は免れたものの特設注意市場銘柄(当時)に指定され、世論の批判を受けた。
最近でも不正会計が明らかになった人工知能(AI)開発のオルツがIPOからわずか10カ月で上場廃止となり、民事再生法の手続き開始も申し立てるなど、不正に手を染めた企業には厳しい制裁が待ち受けている。
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