フランスや英国、カナダ、オーストラリアは、23日に始まった国連総会の一般討論演説に先立ち、パレスチナを正式に国家承認することを発表した。この動きに追随する国は増えると見込まれている。

約150カ国がすでにパレスチナを国家として承認している。だが、それはパレスチナの人々が完全な意味で自らの国家を持っているということを意味するわけではない。

実際のところ、完全な自治の実現はこれまで以上に遠のいているように見える。それでも、今回の承認表明はパレスチナにとって象徴的な意味を持ち、パレスチナ国家樹立に反対するイスラエル政府を外交的に孤立させる効果がある。

国家とは何か

1933年のモンテビデオ条約によると、国家となるには四つの要件を満たさなければならない。ヨルダン川西岸とガザは、恒久的住民という最初の要件は満たしているが、政府と明確な領域、他国との関係を取り結ぶ能力という残り三つの要件についてはいずれも十分に満たしていない。

 

パレスチナ人にとって国家樹立は現時点で現実的か

90年代前半のイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)による一連の和平合意により、限定的な自治を目的としたパレスチナ自治政府が設けられた。同政府はヨルダン川西岸の一部のみを統治しており、他の地域はイスラエルの支配下にある。2005年にイスラエル軍と民間人入植者が撤退したガザは、07年にイスラム組織ハマスが支配権を掌握し、パレスチナの統治主体は実質的に二分されている。

90年代の合意では、イスラエルとパレスチナが恒久的な紛争解決に向けた交渉を行うことが取り決められた。これはイスラエルと共存するパレスチナ国家の樹立を意味すると広く理解されていた。領土の境界については相互合意によって定められることになっていた。一方、パレスチナ側が他国と合意できる範囲は経済・文化・科学・教育の分野に限定された。

パレスチナ人が望んでいるのは自らの運命を自身で決めることであり、それを実現するには承認表明以上のものが必要となる。それは、イスラエルが少なくともガザとヨルダン川西岸の大部分に対する支配を断念しなければならないことを意味するが、事態は逆の方向に動いている。23年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を受けて、イスラエル軍はガザに再侵攻した。

今回の国家承認はパレスチナ人にとって何を意味するのか

一連の承認はパレスチナ国家樹立という大義に正当性を与えるものだ。全パレスチナ人を代表すると主張するPLOは、88年に初めてパレスチナ国家の樹立を宣言。その後、国家として承認を表明する国が次第に増えていった。

2012年には、国連総会がパレスチナに非加盟国オブザーバーの地位を付与する決議を採択。投票権はないものの、パレスチナ代表団は国連の主要機関で議論に参加できるようになった。

正式な国連加盟国となるには、15カ国で構成される国連安全保障理事会で少なくとも9カ国の承認が必要だが、常任理事国である中国とフランス、ロシア、英国、米国には拒否権がある。米国はこれまで、イスラエルとの和平合意を経ずにパレスチナ国家を承認することに反対の立場を取っている。

この問題の歴史的背景とは

1517年にオスマン帝国の一部となったパレスチナ地域は、第1次大戦後に英国の委任統治下に置かれた。最初のいわゆる二国家案は1937年のピール委員会によるもので、アラブ人とユダヤ人の衝突を防ぐために当時、英委任統治領パレスチナと呼ばれていた地域の分割が提案された。

国連は47年に別の分割案を採択したが、アラブ側はいずれの案も拒否。48年にイスラエルが独立を宣言し、第1次中東戦争が起きた。これで推定約70万人のパレスチナ人が難民となった。

67年の戦争では、イスラエルは他のアラブ領土に加え、ガザやヨルダン川西岸、東エルサレムを占領。住民は軍事占領下に置かれ、パレスチナ民族主義が高まった。87年に始まった第1次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)では、パレスチナ側で1200人余り、イスラエル側で約200人が命を落とした。93年にオスロ合意が成立し、パレスチナ人は限定的な自治権を獲得したが、暫定的な措置と位置付けられていた。

 

なぜ和平合意は頓挫したのか

最終合意の妨げとなっていた諸問題の解決に繰り返し失敗する中、軍事占領やイスラエルによる入植活動、暴力行為は続いた。

2000-05年の第2次インティファーダは、特に流血の多い時期だった。イスラエルは05年にガザから軍と入植者を撤退させ、境界の大部分を封鎖した。その後、ハマスがパレスチナ自治政府から同地域の支配権を奪取すると封鎖を強化。ガザはその後、ロケット弾や迫撃砲、パレスチナ人戦闘員をイスラエルに向けるための拠点となった。

イスラエル人とパレスチナ人は2国家解決をどう考えているのか

世論調査によると、ユダヤ系イスラエル人とパレスチナ人の大多数はもはや2国家解決という構想を支持していない。5月調査では、パレスチナ人の57%が同構想に反対と回答。24年前半の調査では、イスラエル人の55%が、非武装化されても独立したパレスチナ国家の樹立に反対すると答えた。

代替案は何か

多くのイスラエル人は、ヨルダン川西岸の少なくとも一部に同国の主権を広げる案を支持している。この地域ではイスラエルによる入植活動が続いている。併合を支持する人々は、イスラエル人には恒久的に同地域にとどまる権利があると主張している。

イスラエルが最終的にヨルダン川西岸に住むより多くのパレスチナ人を完全に支配した場合、市民権を与えてユダヤ人の人口的優位を弱めるか、あるいは無国籍のままにとどめてアパルトヘイトとの批判を強めるか、いずれかの選択を迫られるだろう。

原題:Is Palestine a State? What If Countries Say It Is?: QuickTake(抜粋)

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