腕時計で完全に独自性のあるデザインを実現するのは簡単ではない。多くのブランドが、どこかしらロレックス、IWC、カルティエを思わせるような時計を手がけている。だが、シャネルが2000年に発表したオールセラミック製の「J12」は、「新しい存在」として瞬く間に認識された。

黒のJ12は、シャネルで長年アーティスティックディレクターを務めたジャック・エリュ氏がデザインを手がけ、柔らかさと力強さを兼ね備えている。滑らかなエッジが、時計にエレガントさと装着のしやすさを与え、頑丈なセラミック製のケースとブレスレットは高い耐久性を誇る。男性用・女性用と区別するのが一般的だった当時の時計業界において、ユニセックスとして打ち出された点も特筆すべきだ。装着すると、モノクロームのはっきりとした存在感がありながらも、けばけばしさはない。

03年には白いバージョンが登場し、その後は複雑な機能を備えたものや希少な派生モデルも登場したが、セラミック素材の新色は一切展開されてこなかった。しかし今年、「J12 ブルー」が時計見本市「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ」で披露され、注目を集めた。

シャネルの「J12 ブルー」

新たに採用されたこの色は、シャネルのメンズフレグランスでもすでに馴染みがあるが、見慣れたJ12に全く新しい印象をもたらしている。ケースの裏側はサファイアガラスで透明になっており、中心部がくり抜かれた自動巻き用の半円形プレートの奥に機械式腕時計の心臓部であるムーブメントを見ることができる。70時間のパワーリザーブを備えたムーブメントはスイスのケニッシ製で、時計愛好家にはたまらない仕様だ。

シャネルは18年に、ケニッシに20%出資し、高級腕時計分野での地位を強化してきた。同年に、カルト的人気を誇る独立系ブランド「F.P.ジュルヌ」にも20%、さらに24年には、型破りなデザインで知られる「MB&F」にも25%出資した。

J12ブルーは、黒のインデックスと小さな日付表示付き38ミリモデルの価格が1万500ドル(日本円では178万2000円)。手に入れられれば、高級時計の伝統の一端を身にまとうことになるだろう。ただ、落ち着いたネイビートーンゆえ、誇示することなく静かに楽しめるだろう。

原題:Chanel’s New J12 Bleu Ceramic Watch Quietly Screams Good Taste(抜粋)

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