(ブルームバーグ):石破茂首相の辞任表明を受けて財政拡大観測が高まり、日本の超長期金利に上昇圧力がかかった。
新発30年債利回りは8日に前営業日比6ベーシスポイント(bp)上昇。ブルームバーグのデータによると、5年債との利回り差は世界の主要国を大きく上回る水準に拡大した。
石破氏の後任として財政拡張に積極的な候補が有力視されていることから、投資家は国債利回りが一段と上昇すると予想している。石破氏が7日に辞任を表明したことで、債券市場は向こう数週間にわたって政治的不透明感にさらされる見通しだ。日本国債は今年これまで、欧米市場にも影響が及ぶボラティリティーの要因となってきた。

バークレイズ証券の門田真一郎為替債券調査部長は「自民党と公明党は衆参両院で過半数を失ったため、財政拡大を求める野党各党と連携せざるを得ない」と指摘。今後の動向にかかわらず「イールドカーブ(利回り曲線)はさらにスティープ(傾斜)化する可能性が高く、問題はその程度だ」と述べた。
30年債利回りは8日、3.285%と先週付けた過去最高水準に並んだ。20年債利回りは前営業日比3.5bp高い2.67%に上昇。40年債は取引が成立していない。
長期国債先物市場では政治的な不透明感が影響して中心限月の交代を控えた取引が膨らみ、取引量は3カ月ぶりの高水準となった。
次の重要イベントは一部で10月上旬と報じられている自民党総裁選だ。有力候補には財政拡張に積極的とされ、昨年の総裁選で石破氏と決選投票を争った高市早苗前経済安全保障担当相が挙がる。前回選挙で最終候補の1人だった小泉進次郎農相も出馬する可能性がある。
日本の超長期国債価格は米国や英国、欧州と同様に、将来のインフレ懸念や巨額の政府債務、市場に供給される国債を投資家が吸収できるかどうかへの不安から、持続的な下押し圧力にさらされている。

一方、政治の先行き不透明感が日本銀行の政策見通しを複雑化させており、中期金利は低下する可能性がある。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が織り込む10月の利上げ確率は21%と、先週の50%超から低下した。中期債は5日発表の米国の雇用統計が連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測を強め、米国債利回りが低下したことも支えになっている。
利回りが再び急騰すれば、その影響は日本にとどまらない。世界有数の対外資産保有国である日本の国債利回りがさらに上昇すれば、資金の還流を促し、世界の債券市場にボラティリティーを引き起こしかねないとアナリストは警戒する。
市場参加者は今週予定されている5年債入札に投資家需要を探る手がかりを求めている。今後数週間で20年債と40年債の入札が続く。財務省は超長期債の発行減額を発表しているが、財政・政治の不透明感が続く中、投資家の懸念を和らげるには現状の削減幅では不十分な可能性がある。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、金丸壮史氏は「次期政権下で見込まれる財政出動は、既に日本国債市場にとって懸念材料になっている」と指摘。「需給の不均衡を劇的に変える何かがない限り、超長期債の大幅な上昇は起こりそうにない」と述べた。
--取材協力:山中英典.
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