(ブルームバーグ):武田薬品工業が開発中のナルコレプシー(居眠り病)1型治療薬は、後期臨床試験で患者の症状を大幅に改善し、慢性睡眠障害の根本原因に作用する初の治療薬となる可能性がある。
臨床試験中のオベポレクストンを12週間服用した患者は、プラセボ投与群と比較して、日中の覚醒度の向上、カタプレキシー(突発的な感情の高ぶりで筋肉から力が抜ける発作)の減少、生活の質(QOL)の全般的な改善を示した。この結果は、9月10日までシンガポールで開催中の世界睡眠学会で発表された。重篤な副作用は報告されなかったが、不眠や頻尿などがよく見られる副反応として確認された。
武田薬品は、ナルコレプシーに関連する生物学的メカニズムであるオレキシン2受容体を標的とした新薬開発を進めている。世界で約300万人のナルコレプシー患者がおり、既存治療法では症状の一部しか改善できず、治療に大きな空白が残されている。アルカームスの競合候補薬は7月の中間段階試験で結果がまちまちだった。エーザイや住友ファーマなども競合薬の開発を進めている。
同社の研究開発を統括するアンディ・プランプ取締役はインタビューで「長く業界に携わってきたが、オレキシン試験で得られたデータほど説得力のあるものは見たことがない」と述べた。「多くの患者に機能的な治癒をもたらす可能性を秘めている」と語り、この薬が画期的で最良の治療法となる可能性を確信しているという。
武田薬品は19カ国で273人の患者を対象に1日2回、1ミリグラムまたは2ミリグラムを投与する臨床試験を実施した。同社は3月までに世界各国で承認を申請する予定で、プランプ氏は「可能な限り迅速に」進めていると述べた。
ジェフリーズ証券アナリストのスティーブン・バーカー氏は7月、オベポレクストン単体ではナルコレプシー1型でピーク時30億ドル(約4400億円)の売り上げを見込めると指摘。より広範なオレキシン作動薬群では、より幅広い適応症で2倍以上の売り上げを達成する可能性があると言及した。
ナルコレプシーの症状には、日中の激しい眠気、カタプレキシー、入眠時や覚醒時に体が動かせなくなる睡眠麻痺や幻覚、夜間の睡眠障害などがある。ナルコレプシー・ネットワークによれば、1型はカタプレキシーを伴う症例を指し、2型はカタプレキシーを伴わない症例を指す。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.