(ブルームバーグ):アジア開発銀行(ADB)のチーフエコノミスト、アルバート・パク氏は8日、米連邦準備制度が利下げすれば、トランプ政権の関税政策に今なお苦しむアジア経済にとって歓迎すべき支援になるとの見方を示した。
8月の米雇用統計で雇用増が大きく減速し、失業率が2021年以来の高水準に達したことから、米連邦準備制度が今年初めて金融緩和に踏み切るとの観測が広がっている。パク氏はシドニーでのインタビューで、米利下げが実現すれば「域内の金融環境にとって有益だ」と述べた。
同氏は「融資返済に多少の余裕が生まれる」とした上で、来年のアジア成長見通しについては「関税の影響が遅れて表面化する中で、やや不透明になっている」と指摘した。
パク氏はまた、ラオスとモルディブが脆弱(ぜいじゃく)な財政状況にあり、「かなり高い」債務水準と、ドル建てが多い借入金の返済コスト上昇に直面していると説明。一方、他のアジア諸国は「実務的に運営」されており、「健全」なマクロ経済見通しだと語った。
最も注視しているのはラオスとモルディブだとしながらも、地域全体としては貿易ショックに「驚くほど強靱(きょうじん)」との見方を示した。
ADBは月内にアジアの経済成長見通しを改定し公表する予定。パク氏によれば、7月時点の修正と大きく変わらない見込み。
7月の見通しでは、東アジアの25年成長率予測を4.4%から4.3%へ小幅に下方修正した。依然として堅調だが、貿易摩擦や世界的な金融環境タイト化が成長の重しとなっていることを示している。
ADBの算出によると、米国がアジアに課している輸入関税は平均27.8%と過去最高水準にある。特に中国やインドが高関税の対象となり、その他多くのアジア諸国も15-20%の関税を課されている。
パク氏は「多くの国がほぼ同じ税率を課されているため、生産拠点を移す大きな圧力は見られない」と分析。「輸出市場の安定は維持されるだろうが、最終的には産品の価格上昇が需要を押し下げる」と語った。
原題:Fed Cut Would Relieve Asia as It Grapples With Tariffs, ADB Says(抜粋)
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