(ブルームバーグ):ベトナムの電気自動車(EV)メーカー、ビンファスト・オートはインド市場に初めてEVを投入した。世界3位の自動車市場で、テスラやタタ・モーターズに対抗する。
ビンファストの6日の発表によると、最廉価モデルのコンパクト・スポーツタイプ多目的車(SUV)「VF6」の価格は160万ルピー(約270万円)からとなる。
中型SUV「VF7」のベーシックモデルの価格は約200万ルピーとなる予定。これはテスラ「モデルY」のインド国内価格の約3分の1だが、同国EV最大手タタの最廉価モデルより高い。中国の比亜迪(BYD)のSUVエントリーモデル「ATTO3」の価格は約250万ルピーからとなっている。
ビンファストは、今回発表した価格は特別価格であり、販売が1500台に達するか、11月30日を迎えた時点で終了するとしている。
今回の価格設定でシェアを獲得できるか一種のテストケースとなる。ビンファストはインドに工場を建設した初の海外EV専業メーカーであり、テスラの参入からわずか数週間後に販売を開始。5億ドル(約741億円)を投じたインド南部の新工場により、ビンファストはテスラやBYDのEVに課される70%の輸入関税を回避できる。
高関税のためテスラのモデルYの価格は600万ルピー強となる。自動車市場調査会社JATOダイナミクスのデータによると、インドで需要が集中する価格帯は220万ルピー前後で、モデルYの価格はその水準を大きく上回る。テスラは7月にインド国内に初のショールームをオープンしたが、初期の受注は振るわない。
タミルナド州トゥティコリンにあるビンファストの工場は7月に稼働を開始した。当初の生産能力は年間5万台だが、1年以内に15万台まで引き上げ、その後3年以内にさらに倍増させる計画だ。

同社の2024年の世界EV販売台数は9万7399台で、今年は倍増を目指している。インドでは7月に初のショールームを開設し、12月までに27都市で35店舗に拡大する予定だ。
ビンファスト・インディアのファム・サン・チャウ最高経営責任者(CEO)は6日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、インドでは中程度からやや高めの価格帯モデルを投入する方針だと述べた。この戦略により、マヒンドラ・アンド・マヒンドラやタタといった国内勢に加え、韓国の現代自動車のインド部門ヒュンダイ・モーター・インディアやマルチ・スズキ・インディアとも競合することになる。
ビンファスト創業者のファム・ニャット・ブオン氏は4月、同社は高い物流コストで利益率が圧迫される北米や欧州よりも、インドやインドネシア、フィリピンを含むアジアを優先する考えを示していた。同社はインドの顧客に3年間の無料充電サービスも提供する。
原題:VinFast Debuts in India With EVs That Undercut Tesla, BYD Prices(抜粋)
--取材協力:Saikat Das.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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