(ブルームバーグ):トランプ米大統領は電気自動車(EV)販売のインセンティブ削減と排ガス規制の緩和を進めており、ガソリン車投資にシフトするデトロイトの大手自動車メーカーにとって数十億ドル規模の恩恵となりそうだ。
ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、2工場でのEV生産計画を縮小し、別の1工場を電動ピックアップではなくガソリン車に転換すると発表した。フォード・モーターは3列シートの電動スポーツ多目的車(SUV)の計画を取りやめ、その資金を将来の内燃機関車やハイブリッド車に振り向けている。「ジープ」を傘下に持つステランティスは燃料消費が多めの「Hemi V-8」エンジンを復活させた。
規制緩和が最終決定されれば、デトロイトの自動車大手や競合他社はEV向けや環境規制対応のために確保していた数十億ドルを再配分できるようになる。GMは2022年以降、燃費・排ガス基準を満たすため「規制クレジット」購入に35億ドル(約5200億円)を費やしてきたが、トランプ氏の政策が定着すればこうした資金は必要でなくなる。
フォードもクレジット購入を今年だけで15億ドル近く削減し、ガソリン車やハイブリッド車に振り向ける計画だ。同社のジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は政策転換により「今後2年間で数十億ドル規模の機会が生まれる可能性がある」と最近アナリストに語った。
トランプ政権が推進して成立した3兆4000億ドル規模の大型減税・歳出パッケージでは、9月30日付でEV購入向けの7500ドル税額控除が終了する。燃費基準未達の罰金も撤廃され、クレジット購入が不要になる。ステランティスは過去2年にそれぞれ1億9000万ドルの罰金を支払っていた。
GMのポール・ジェイコブソン最高財務責任者(CFO)は先月、罰金廃止により「26年以降は確実にコスト削減につながる」と述べた。
米環境保護局(EPA)も自動車の温室効果ガス排出を制限する厳格な規制の撤回を提案している。トランプ氏はカリフォルニア州の独自規制も事実上終わらせる法案に署名した。
ファーリーCEOは4-6月(第2四半期)決算説明会で「EPAの姿勢は米国で大きく変化した」と述べ、内燃機関車やハイブリッドを手がけるフォード・ブルー部門が最大の恩恵を受けるとの見方を示した。
原題:Detroit’s Carmakers to Save Billions in Trump Emissions Rollback(抜粋)
--取材協力:Kara Carlson、Gabrielle Coppola.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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