(ブルームバーグ):8日の日本市場では株式が3営業日続伸し、東証株価指数(TOPIX)は終値で最高値を更新した。石破茂首相の辞任表明で新政権による政策推進期待が広がり、為替の円安進行も好感された。債券は今後の財政拡張への懸念で償還期限が10年を超す超長期債が下落(利回りは上昇)。
石破首相は7日の記者会見で、辞任する意向を表明した。米国との関税交渉に一つの区切りがついたとし、「後進に道を譲る決断をした」と発言。辞任表明を受けて行われる総裁選には出馬しないと明言した。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、次期政権が決まれば株式市場には相応の財政拡大と共に、成長戦略への軸足のシフトがポジティブに作用するとの見方を示した。
【株式】
株式相場は3営業日続伸。石破首相の辞任に伴う自民党総裁選の実施で、景気刺激策や規制緩和などが進むとの期待が高まった。為替の円安進行も好感され、電機や機械など輸出セクター、鉄鋼や非鉄金属など素材セクター、不動産や建設の内需セクターが幅広く買われ、東証33業種は全て上昇。
売買代金上位ではアドバンテストやフジクラ、三井不動産が高く、シティグループ証券が投資判断を上げたマツダは急伸。次期自民党総裁候補として高市早苗前経済安全保障担当相の可能性を見込み、三菱重工業や東京電力ホールディングスなど国防・原子力発電銘柄も堅調。半面、良品計画やキーエンス、楽天銀行は軟調。
フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は「参院選後の停滞した状況が変わっていくという期待感がポジティブな材料となった。財政支出の拡大が特に期待されている」と指摘。為替の円安も追い風との認識を示した。
富国生命保険の野崎誠一有価証券部長は「海外の主に短期勢などがヘッドラインに反応して相場を押し上げているのではないか。ロングオンリーの投資家は様子見だろう」と話す。新総裁については小泉進次郎農相が有力というのが市場コンセンサスだろうが、政治の停滞感が強まっていた中、誰が新総裁になっても政策は進むので短期的にはポジティブ」と言う。
【為替】
東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台前半で推移。石破首相の辞任表明で日本の財政悪化懸念が強まり、早朝は円売り優勢の展開となったが、次第に下げ渋った。
みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、米経済統計の弱さがドルの上値が重い要因と分析。「米雇用統計は6月分の非農業部門雇用者数がマイナスに転じるなどインパクトがあった」とし、9月の米利下げ織り込みが25bp以上となっており、「市場が先走り過ぎている面もあるが、ドルの上値を抑えている」と話した。
一方、朝方発表された日本の4-6月国内総生産(GDP)改定値が予想を上回ったことが円買い要因との認識も示した。
5日公表の8月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数がエコノミスト予想を下回る伸びにとどまり、失業率は2021年以来の高水準に上昇。利下げ期待の広がりで米10年債利回りは4.07%まで低下し、円は146円80銭台まで上昇していた。4-6月GDP改定値は前期比年率2.2%増と、速報値の1%から上振れた。
【債券】
債券相場は超長期債が下落。財政規律重視派の石破首相が辞任を表明し、財政拡張懸念から売りが優勢だった。
アムンディ・ジャパンの宮内祐季債券運用部共同部長は、石破首相の辞任表明を受け日本銀行の10月利上げの可能性が低下すると共に、財政拡張への懸念も意識されやすくなり、利回り曲線は目先スティープニング(傾斜化)圧力が高まるとの見方を示した。
オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では日銀年内利上げ織り込みは45%付近と、一時70%を超えていた8月下旬から低下している。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、4-6月の実質GDPが上方修正され、物価も高止まりしていることを考えると、日銀は10月の展望リポートで成長率、物価見通しともに上方修正すると予想。石破首相の辞任表明で「10月の利上げは難しいかもしれないが、ずっと先送りできるものではない。長めの債券は買いにくい」と話した。
新発国債利回り(午後3時時点)
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:アリス・フレンチ、堤健太郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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