(ブルームバーグ):米ジョージア州にある韓国企業の電気自動車(EV)用バッテリー工場で行われた大規模な不法移民摘発は、韓国に大きな衝撃を与えた。李在明大統領がホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、韓国企業による数千億ドル規模の対米投資を約束してから、わずか2週間足らずの出来事だった。
韓国当局は週末を通じて、現地で拘束されていた現代自動車とLGエナジーソリューションの合弁事業の建設現場にいた自国民300人の解放に向けて動いた。拘束された労働者がどのようなビザを保有していたのか、また現場に立ち入る資格があったのかは依然不明。韓国政府は、行政手続きが完了次第、チャーター機を派遣して帰国させる方針を示した。
今回の取り締まりは李、トランプ両氏が首脳会談を行い同盟関係を誇示し、新たな貿易協定を確認した直後という微妙なタイミングで起きた。両国間の合意には、米国で事業拡大を進める韓国企業を支援するための3500億ドル(約51兆6000億円)規模の投資ファンド(うち1500億ドルは造船業向け)設立が盛り込まれ、民間企業も追加で1500億ドルの直接対米投資を約束していた。

今回の摘発により李政権には国内で圧力がかかるほか、米韓の間で大きな外交問題に発展する恐れもある。6日には韓国の主要紙が一面で取り上げたほか、手首や腰、足首を拘束されバスに乗せられる労働者のテレビ映像は国民の怒りを呼んだ。
韓国最大の発行部数を誇る朝鮮日報は6日、拘束された労働者がバスに手をつく写真を掲載。ジョージア州の収容施設の映像も紹介し、「カビに覆われており、刑務所よりひどい」と報じた。
ソウルにある崇実大学のキム・テヒョン教授は摘発について「背後から刺されたような気分だ」と述べ、「大半の韓国人が憤りを禁じ得ない」と指摘。韓国企業は「必然的に」対米投資計画に慎重になるだろうと語った。
今回の摘発は、韓国による巨額の対米投資計画に影を落としている。韓国の代表的投資プロジェクトに関わる労働者の拘束は、米国での事業展開には想定以上の政治・法的リスクが伴うと企業に受け止められかねない。
現代自動車は8月、2028年にかけて行う米国への投資額を260億ドルに引き上げると発表。3月に公表した210億ドルから50億ドル上積みされた。自動車や鉄鋼、ロボットの生産拡大を目指すとしている。
原題:US Migrant Raid Jolts South Korea, Stirs Investor Anxiety (1)(抜粋)
--取材協力:Shinhye Kang.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.