(ブルームバーグ):石破茂首相が就任から1年足らずで辞任を表明した。財政規律に厳しい姿勢で知られる首相の退陣を受け、次期政権下で財政拡張圧力が高まるとの見方から、市場では超長期国債を中心に金利上昇(価格下落)圧力が強まる可能性が意識されている。
7月の参院選大敗を受け、自民党は8日に臨時総裁選の前倒し実施を巡り結論を出す予定だったが、首相の辞意表明で後継選びの動きが一気に加速する見通しだ。政治の流動化は、インフレ対応やトランプ関税の影響、日本銀行の利上げ時期を注視する市場に新たな不確実性をもたらす可能性がある。
市場関係者の見方は以下の通り:
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャー
この先は昨年の総裁選の再来になる可能性も意識され、仮にそうなれば候補者はそれなりにいて、かえってマーケットは動きにくくなりそうだ。いずれにしろ財政弛緩(しかん)が意識され、超長期金利は上振れるとみる。ドル・円は米経済の弱さを意識しつつ、日本の政治に対する懸念と金融政策正常化頓挫が意識され、横ばいか一時的にやや円安が進むのではないか。
ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長
日本株式市場では、政局の先行き不透明感がいくぶん後退することにより、ひとまず上昇する展開が想定される。その後は、次期自民党総裁(首相)が誰になるかが焦点になり、積極財政派の高市早苗氏が選出された場合は、財政懸念から円安圧力がかかりやすくなるため、日本株式市場は外需関連銘柄を中心に株高が想定される。
リード・キャピタルの副最高投資責任者(CIO)、ジェラルド・ガン氏
選挙結果が振るわなかった時点で、石破氏が辞任する意思を示すのは時間の問題だった。国内の政治的混乱は、市場が今後どのように推移するかについて、広い意味での主要なリスクにはならないと考える。最大の要因は、依然として日本に影響を与える外部的要因にあると見ている。
アストリス・アドバイザリー・ジャパンの投資戦略責任者、ニール・ニューマン氏
政治が市場の動きに及ぼす短期的な影響は概して小さいと考えるが、安倍首相が長年示してきたように、強力なリーダーシップと政策は長期的な影響をもたらす。石破氏が後継者に道を譲ることは前向きな変化だ。疲弊した有権者にとって、若き後継者や女性首相が国を率いることは非常に前向きに受け止められるだろう。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト
総裁選実施とそれに伴う経済政策のハト派化の可能性を織り込み、週明けは円売りで反応しそうだ。もっとも、世論のインフレ批判も強い中、財政・金融政策の大規模なハト派シフトを主張する候補が総裁選で勝利する可能性は必ずしも高くなさそう。小泉農相や林官房長官など現職閣僚が次期総裁候補として有力視される流れとなれば、経済政策変化への期待は沈静化し、円買い戻しが予想される。
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