(ブルームバーグ):ロシア軍は7日未明、ウクライナ首都キーウにある主要な政府庁舎を初めて攻撃した。ウクライナのゼレンスキー大統領はその数時間後、フランスのマクロン大統領と、ウクライナの防衛力強化に向けた措置について協議した。
ゼレンスキー大統領はテレグラムへの投稿で、首都を含む複数の都市に対するドローンとミサイルの集中攻撃により、少なくとも4人が死亡、約44人が負傷したと明らかにした。
ゼレンスキー大統領によれば、マクロン仏大統領との協議では、各国と連携した外交的対応や今後の方針について話し合われた。ウクライナはフランスと協力し、防衛力を強化するための新たな措置の準備を進めているという。
ウクライナのシビハ外相は欧州委員会のカラス外交安全保障上級代表と協議。ロシアがキーウの政府庁舎を攻撃したことについて、侵攻開始から3年半で初めての事態だとし、「重大なエスカレーションだ」と非難した。
トランプ米大統領が主導する和平の呼びかけは拒否され、ロシアは戦争を終わらせる意思をほとんど見せていない。ロシアがむしろ、3年半に及ぶ戦争で新たな攻勢を準備しているのではないかと欧州の指導者らは懸念している。
キーウ中心部にある大きな閣僚会議(内閣)ビルから煙が上がる様子が見えた。この建物は屋根と上層階が損傷し、消火活動が行われているとスビリデンコ首相がソーシャルメディアへの投稿で明らかにした。

ウクライナ空軍のテレグラムへの投稿によれば、ロシアはドローン800機余りとミサイル13発を発射したが、その大半は撃墜もしくは妨害された。ゼレンスキー大統領はこれより先、複数のドローンがベラルーシ側から越境してきたようだと述べていた。
ロシア国防省は声明で、ウクライナの防衛産業やドローン製造に関連する施設、空軍基地、首都キーウ西部の工業プラント、南部の兵たん拠点などを攻撃したと発表した。目標はすべて破壊され、キーウの他の施設は標的にしていないとしている。一方で、政府庁舎や住宅への被害については言及しなかった。
キーウのクリチコ市長はテレグラムへの投稿で、同市で死亡した2人のうちの1人は1歳の子どもだったと明らかにした。少なくとも20人が負傷したという。
今回の攻撃は首都の住宅地も直撃。当局によれば、キーウ市内の地区の一つでは9階建ての集合住宅が大きな被害を受け、複数の階が部分的に破壊された。クリチコ市長によると、他にも複数の建物や車両が炎上し、ペチェールシク地区の政府関連施設でも火災が発生した。
中部の都市クリブイリフやドニプロ、南部の港湾都市オデーサも攻撃を受け、民間のインフラが標的となり、負傷者も出たと地元当局は述べている。
ロシアはここ数カ月、空爆を強化している。国連によれば、今年7月には2022年5月以降で最大級の民間人被害をもたらした。8月28日にはキーウへの攻撃で少なくとも25人が死亡したと地元当局は発表している。
欧州諸国の指導者は、ロシアが新たな攻勢に出るのではないかとの懸念を強めている。フランス南部トゥーロンで先月末に開催された安全保障会議では、ドイツとフランスの当局者が、ウクライナが支配する東部ドネツク州の要衝ポクロウシク周辺に集結するロシア軍について協議したと、事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにした。
トランプ大統領は、アラスカでロシアのプーチン大統領と先月会談するなど、ロシアによるウクライナ全面侵攻終結に向けた仲介を試みているが、ロシア側は停戦への姿勢をほとんど示していない。プーチン氏は先週、ウクライナのゼレンスキー大統領が交渉を望むなら「モスクワに来ればよい」と述べた。
これに対し、ゼレンスキー氏は5日のABCニュースのインタビューで、プーチン氏がキーウに来ればよいと語り、「私の国が毎日ミサイルにさらされ、攻撃を受けているときにモスクワに行くことはできない。私はこのテロリストの首都に行くことはできない」と語った。
ロシア側はウクライナから昨夜ドローン69機が発射されたが、被害は出ていないとしている。
原題:Zelenskiy Calls Macron as Russia Hits Government Office in Kyiv
Russia Hits Ukraine’s Government Complex Amid Air Barrage (2)(抜粋)
(攻撃の詳細を追加して更新します)
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