(ブルームバーグ):石破茂首相は辞任する意向を固めたとNHKが7日、報じた。参院選大敗を受け、自民党は8日に首相交代につながる臨時総裁選の実施について結論を出す予定だった。党内の混乱を収める狙いがあるとしている。
昨年10月の首相就任から1年足らずの決断となる。首相官邸は石破首相が午後6時から緊急記者会見を開くと発表した。
7月の参院選で大敗した後も、石破首相は物価高対策などに取り組むとして続投する意向を示していた。自民党内で首相交代につながる党総裁選前倒しを求める声が拡大する中、参院選総括を受けて森山裕幹事長らが辞意を表明。政権運営は厳しさを増していた。
石破首相は6日、菅義偉副総裁、小泉進次郎農相が首相と会談したと朝日新聞が報じた。臨時総裁選実施の意思確認が8日に行われる前に、自発的に辞任するように促していたという。報道各社の調査では前倒しに賛成する意見が過半数を占める可能性が高まっていた。
共同通信は7日、石破首相の辞任意向を受け、自民党が意思確認の手続きを中止する方針を固めたと報じた。複数の政権幹部は、石破首相は次期自民党総裁選に出馬することはないとの見通しを示したという。
新総裁で国会での首相指名選挙に臨むが、与党は衆院でも過半数割れしており、野党の対応次第で新総裁が首相に選ばれない可能性もある。総裁選では物価高対策や日米関税交渉などに加え、連立拡大を含めた野党との協力の在り方などが争点になる。
市場に影響
市場は概ね、石破首相が政権を長期的に維持できない可能性を織り込んでいたものの、辞任の意向報道により更なる不安定化リスクに直面する。週明け8日のアジア市場の取引開始時には円相場に下押し圧力がかかる恐れがある。円は先週、弱含みの動きをみせ、対ドルで0.3%下落した。
石破首相の後任が財政支出を拡大する可能性が高まれば、長期国債には一段の売り圧力がかかり、利回り上昇につながる公算が大きい。一方で、不透明感が強まることで日銀の次回利上げ判断が先送りされるとの見方が広がれば、イールドカーブの短期部分には支援材料となる可能性もある。
株式市場については、円安進行や追加の財政刺激策観測が浮上する局面で恩恵を受けやすい傾向がある。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、「この先は昨年の総裁選の再来になる可能性も意識され、仮にそうなれば候補者はそれなりにいて、かえってマーケットは動きにくくなりそうだ」と話す。財政の緩みが意識されることから、超長期金利は上振れると予想した。
後任候補
石破首相が辞任すれば、自民党内で後任を決める総裁選に向けた動きが本格化する。立候補には20人以上の議員の推薦が必要となる。後任の総裁候補としては、昨年の総裁選で決選投票を争った高市早苗前経済安全保障担当相に加え、小泉農相、林芳正官房長官、小林鷹之前経済安全保障担当相らの名前が取り沙汰されている。
元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は臨時総裁選の意思表示が行われた場合は賛成、反対で党が分裂状態になることから、「その前に退陣を決断したということだろう」と分析した。後任には高市、小泉両氏らが名乗りを挙げると見方を示すが、首相に直接決断を促したとされる小泉氏が最有力とみている。
(市場関係者のコメントを追加しました。)
--取材協力:氏兼敬子、南部真帆、横山恵利香、小宮弘子.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.