(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)の当局者は、11日の政策委員会の会合で波乱のない決定を下す見込みだが、ユーロ圏の中枢で激化する政治危機を警戒しながら見守っている。
ECBが政策金利を据え置くことは、ほぼ確実視されているが、会合が開かれるころには、フランスのバイル内閣が崩壊している公算が大きい。ユーロ圏2位の経済大国フランスにおける財政立て直しの行き詰まりは、未解決のまま残る。
ユーロ圏で債務危機が発生した場合、ECBが第一の防衛線を構成することになる。このため、ラガルド総裁の11日の会見での発言は、フランス発の混乱の抑制にどこまで積極的かを探る上で注目される。同総裁はかつて、母国フランスの財務相を務めた。

バイル首相は8日の信任投票で退陣に追い込まれることが濃厚。信任投票の実施が決まって以降、投資家のフランスへの視線は一段と厳しくなっている。内閣退陣となれば、政治の安定をどう取り戻すかについて、マクロン大統領の対応に焦点が移る。
ラガルド総裁は会見で最新のインフレ見通しを示す。今回は、欧州連合(EU)からの大半の輸出品に対し米国が15%の関税を賦課することで合意した後では初めての四半期経済予測が公表される。しかし、政局がそうした材料への関心をそらす可能性もある。
ECBの政策決定に添えられるメッセージは、ユーロ圏の借り入れコストが次にどの方向へ動くのかはっきりしないというものになる可能性が高い。7月の政策委員会の議事要旨によると、「今後の金利判断に関する情報はあえて示さず、慎重かつ中立的なトーンを維持すべきだとの認識が示された」という。
今後の重要な要素となるのは、9月16-17日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ決定が確実視されている米連邦準備制度の動向だ。

フランスの政局はECBに影響を及ぼし得る。それが域内の経済見通しをさらに悪化させる場合、その可能性は一層高まる。フランスの格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」としているフィッチ・レーティングスが12日に予定する格付けレビューで格下げに踏み切れば、事態がさらに混乱する展開となり得る。
米CPI
米国では11日に8月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。ブルームバーグがまとめた予想中央値によれば、食品とエネルギーを除くコア指数は、2カ月連続で前月比0.3%の上昇が見込まれている。
エコノミストらは、米国の輸入関税引き上げが消費者にどの程度波及しているかを精査する見通しだ。これまでのところ、多くの企業が販売維持のため、価格転嫁を控えてきた。

CPI統計は、物価抑制の進展が停滞していることを示すと予想されるものの、労働市場が悪化する中で、投資家は依然として米金融当局が次回会合で利下げに踏み切るとみている。
米労働統計局は9日、3月までの1年間について雇用者数の暫定的ベンチマーク改定を発表する。3月の雇用者数がさらに下方修正され、雇用の伸びが最近鈍化し始める以前から、労働市場がすでに軟化していたことを示すと予想されている。
原題:French Upheaval Overshadows ECB’s Likely Rate Hold: Eco Week(抜粋)
--取材協力:Vince Golle、Alexander Weber、Brian Fowler、Carla Canivete、Laura Dhillon Kane、Monique Vanek、Mark Evans、Anthony Halpin、Travis Waldron.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.