石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは、10月も増産することで原則合意した。複数の参加国代表者が明らかにした。市場シェアの拡大を優先し、価格防衛からの方針転換を強化する。

複数の主要参加国によれば、7日のオンライン会議で約13万7000バレルの増産を承認する見込みだという。サウジアラビアとロシアが主導するOPECプラスは、前回の予想外の減産解除を終えたばかりだ。

日量166万バレルの減産分は当初、2026年末まで維持する予定だったが、10月の増産は、この分が予定より早く巻き戻されることを意味する。一部の代表者によれば、協議は継続中だという。

今回の増産は、OPECプラスによる劇的な方針転換を確実なものとする。供給過剰予想が広がっていたにもかかわらず、市場シェア奪回を狙って220万バレル分の協調減産を1年前倒しで巻き戻すことを決め、原油市場を驚かせた。

今年に入り、OPECプラス諸国やその他の地域からの供給増加に加え、トランプ米大統領による貿易戦争が需要を圧迫し、原油価格は12%下落している。しかし市場はOPECプラスの戦略転換でも意外なほどの耐性を示しており、サウジなどはさらなる供給増に自信を深めている。

減産解除ペースの加速は、インフレ抑制やロシアへの圧力を目的に原油安を繰り返し求めてきたトランプ氏にとっても好都合となる可能性が高い。サウジのムハンマド皇太子は、11月にワシントンを訪問しトランプ氏と会談する予定だ。

OPECプラスが毎月約13万7000バレルずつ、減産を解除するなら、2年前に供給が停止された日量166万バレルの全量が今後1年以内に巻き戻されることになる。

ただし実際の増産量は発表より少なくなる可能性が高い。過去の供給超過の穴埋めを迫られている国々は増産分を放棄せざるを得ず、また余剰生産能力を欠く国もあるためだ。

 

この動きは、特に増産の能力がなく、高価格に依存している参加国には一層の圧力となる。

承認されれば、今回の減産解除はここ数カ月にわたって石油市場を支配してきた緊張を反映するものともなる。供給過剰への警戒が高まる一方で、北半球の夏の間は市場が比較的逼迫(ひっぱく)している状況だ。

長期的に見れば、この決定は予期せぬ供給ショックに備えるための遊休生産能力という安全網を侵食することにもなる。

また、投機筋を出し抜くために意表を突く手を繰り返してきたサウジのアブドルアジズ・エネルギー相による、さらにもう一つの予想外の一手となる。

週初時点では、ブルームバーグの調査に応じた大半の原油トレーダーとアナリストは、OPECプラスが7日の会合で増産を見送ると予測していた。

原題:OPEC+ Agrees in Principle to Increase Production in October (1)(抜粋)

--取材協力:Salma El Wardany.

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