(ブルームバーグ):日本銀行の氷見野良三副総裁は2日、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、引き続き利上げを行うことが適切との見解を改めて示した。追加利上げ時期を示唆するような発言はなかった。
氷見野氏は北海道釧路市での講演で、経済・物価のメインシナリオが実現していけば「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だ」と語った。経済と物価には上下双方向のリスクが考えられるとし、「予断を持たずにみていきたい」とした。

政策判断で重視する基調的なインフレ率は「賃金と物価の相互参照のメカニズムが働いて2%にかなり近づきつつある」などと説明。米関税政策の影響によって足踏みはあっても、いずれ2%の物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見方を示した。
米関税政策の影響が懸念される中でも日本の経済・物価はしっかりした推移が続いており、市場の年内追加利上げ観測は次第に強まりつつある。氷見野氏は関税政策の影響に対する警戒感を維持しつつ、基調的なインフレ率の上昇基調などを背景に、利上げ路線継続の必要性を改めて示した形だ。
日本経済の先行きに関しては、米関税政策の影響がいずれ顕在化し、海外経済の減速に伴って日本企業の収益も下押しされると指摘。当面は関税政策の影響が「大きくなる可能性の方に、より注意が必要ではないか」と語った。
午後の記者会見では、仮に米関税政策の影響が顕在化しなければ、利上げ方向の要因になるとし、判断する上で最も早く入手できるのはヒアリング情報だろうと述べた。利上げに際しては、経済・物価に上下双方向のリスクがある中で、「先走り過ぎにも、後手にも回らないようにしなければいけない」との見解を示した。
氷見野氏から早期利上げに向けて踏み込んだ発言がなかったことなどを受けて、東京外国為替市場の円相場は下落した。講演前の1ドル=147円30銭付近から、午後には一時148円台まで円売り・ドル買いが進んだ。
他の発言
- メインシナリオから離れても困らないよう、適時適切に対応
- リスクや不確実性がなくなることはない
- 実質金利、インフレ率の上振れもあり依然極めて低い水準
- 日米関税合意は大きな前進、不確実性引き下げる
日銀は7月の前回会合で政策金利(0.5%程度)を据え置く一方、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通しを2025年度中心に上方修正した。植田和男総裁は記者会見で、直前の日米関税合意を大きな前進と評価しつつ、金融政策が後手に回るリスクが高いとは思わないとの認識を示した。
翌日物金利スワップ(OIS)から算出した、12月会合までの0.25ポイントの利上げ確率は足元で6割程度。18、19日に開かれる9月会合については10%未満にとどまっている。
ベッセント米財務長官は先月13日、ブルームバーグのテレビインタビューで、日銀の金融政策運営について、私見としつつ「日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語った。こうした発言も年内利上げ観測の背景にある。
(第6段落に午後の記者会見の内容を追加して更新ました)
--取材協力:山中英典.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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